起源と基本構造
ケインズ(1936年)の『一般理論』は、投資が短期の総需要を決めるという点に注目しましたが、投資が同時に生産能力を拡大するという側面は扱いませんでした。ロイ・ハロッド(1939年)は「動学理論についての一試論」で、エヴセイ・ドーマー(1946年、1947年)は資本の拡張と雇用に関する論文で、この二重の性格を分析しました。モデルの中心となる式は g = s / v で、s は貯蓄率、v は資本産出比率です。たとえば所得の20%を貯蓄し、産出1単位に資本4単位が必要であれば、経済は年5%で成長できます。ドーマーは、投資が生み出した生産能力を吸収できるだけ需要が伸びなければ完全雇用は維持できないという条件を強調しました。
保証成長率、自然成長率、ナイフエッジ
ハロッドは、企業が実行した投資に満足する「保証成長率」と、労働力の増加と技術進歩が許容する「自然成長率」を区別しました。完全雇用を伴う均斉成長は両者が一致するときにのみ可能ですが、貯蓄率、資本係数、人口増加率はそれぞれ独立に決まるため、その一致はほぼ偶然に頼ることになります。さらに、実際の成長率が保証成長率から少しでもずれると、期待と投資がその差を広げる方向に動くため、この均衡は「ナイフの刃の上」にあるように不安定だとされました。ベゾーミ(2001年)は、こうした解釈がハロッド自身の意図を一部単純化したものだと指摘しています。この問題はその後の成長理論をめぐる論争の出発点となりました。
ソロー・モデルへの転換と開発経済学
ソロー(1956年)とスワン(1956年)は、資本と労働の代替を認めて資本係数を可変にすれば、経済が安定した均斉成長経路に収束することを示し、ソロー・モデルを打ち立てました。カルドア(1956年)らケンブリッジ学派は、代わりに所得分配を通じて貯蓄率が調整されると考えました。一方、ハロッド=ドーマーの式は1950〜60年代の開発経済学で、目標成長率に必要な投資と外部資金を計算する道具として広く使われ、ルイス(1954年)やロストウ(1960年)の議論とも結びつきました。イースタリー(1999年)は、国際金融機関が用いたこの「資金ギャップ」モデルが投資と成長の実際の関係をうまく予測できなかったと批判しました。今日このモデルは、内生的成長理論へと続く成長理論史の出発点として扱われています。
よくある質問
- ハロッド=ドーマー・モデルを簡単に説明すると?
- どれだけ貯蓄して投資するか、そしてその投資がどれだけ効率よく産出を増やすかによって経済成長率が決まるとする、単純な成長モデルです。
- 「ナイフエッジ問題」とは何ですか?
- 実際の成長率が均衡成長率から少しでもずれると、企業の期待と投資がその差を広げ、経済が均衡に戻らず離れていってしまうという問題です。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
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- Keynes, J. M. (1936). The General Theory of Employment, Interest and Money. London: Macmillan.
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