CampusDownWiki
累計引用 11,386한국어KO 2,690EnglishEN 6,452日本語JA 750中文ZH 1,494
CampusDown(韓国語)↗
日本語

ボーモルのコスト病

📈 経済学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
ボーモルのコスト病は、製造業のように労働生産性が急速に上がる部門と、舞台芸術・教育・医療のように生産性の向上が遅い部門が併存するとき、労働市場を通じて賃金が同じように上がるため、生産性が停滞する部門の単位コストと相対価格が持続的に上昇するという経済学の理論です。ウィリアム・ボーモルが1960年代に提示しました。
目次
  1. 1. 起源:弦楽四重奏のパラドックス
  2. 2. 不均整成長モデル
  3. 3. 実証と現代の議論
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

起源:弦楽四重奏のパラドックス

ボーモルとボーエン(1966年)は、舞台芸術の財政問題を研究するなかでこの現象を見いだしました。18世紀のモーツァルトの弦楽四重奏を演奏するには、今も4人の奏者と同じ時間が必要で、労働生産性はほとんど上がりません。ところが奏者の賃金は、生産性が大きく伸びた他産業の賃金とともに上がらなければ奏者を引き留められません。その結果、1回の公演のコストは時が経つにつれて他の財に比べて高くなり続けます。ジャン・フラスティエ(1949年)も同様に、サービス部門の生産性の停滞が経済構造を変えると見通していました。

不均整成長モデル

ボーモル(1967年)はこれを2部門モデルとして一般化しました。「進歩部門」では技術の進歩によって生産性が着実に上がり、「停滞部門」では労働そのものが産出物であるため生産性がほとんど上がりません。両部門の賃金がともに上がれば、停滞部門の単位コストは際限なく上昇します。停滞部門への需要が価格に敏感ならその部門は縮小しますが、教育や医療のように需要が底堅ければ、経済全体に占める支出や雇用の割合が大きくなり、全体の生産性上昇率は低下します。ボーモル、ブラックマン、ウルフ(1985年)は、はじめは進歩的だったサービスがしだいに停滞する「漸近的停滞」の概念を加え、ボーモル(1993年、2012年)は教育費や医療費が所得より速く上がる現象をこの枠組みで説明しました。彼は、これは社会が貧しくなることを意味するのではなく、進歩部門の生産性向上のおかげで停滞部門のサービスも依然として賄えると強調しました。

実証と現代の議論

ノードハウス(2008年)は米国の産業データを用いて、生産性の伸びが遅い産業ほど相対価格が上がり、名目産出のシェアが拡大することを確認し、ハートウィグ(2011年)も欧州のデータで同様の結果を得ました。一方トリプレットとボズワース(2003年)は、1995年以降に流通や金融などのサービス産業で生産性が大きく伸びたことから、一部のサービスでは「ボーモル病は治った」と論じました。ンガイとピサリデス(2007年)、ヘレンドルフ、ロジャーソン、ヴァレンティニ(2014年)は、部門間の生産性の差が産業構造の変化をもたらす成長モデルを発展させました。ヘランドとタバロック(2019年)は教育費や医療費の上昇の多くがコスト病で説明できると主張し、アギオン、ジョーンズ、ジョーンズ(2019年)は、人工知能が多くの部門を自動化しても自動化の難しい部門が成長のボトルネックになりうるとして、この論理をAI時代に当てはめました。この理論はバラッサ=サミュエルソン効果と、部門間の生産性格差という論理を共有しています。

よくある質問

ボーモルのコスト病を簡単に言うと?
工場の生産は技術の進歩でどんどん効率的になるのに、演奏や授業のように人の時間そのものがサービスである分野はそうならず、賃金はともに上がるため、そうしたサービスが相対的に高くなり続けるという理論です。
コスト病は経済にとって悪いことですか?
停滞部門の相対価格が上がり全体の生産性の伸びが鈍ることはありますが、ボーモルは進歩部門の生産性向上によって社会全体としてはそうしたサービスを賄い続けられると考えました。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Baumol, W. J., & Bowen, W. G. (1966). Performing Arts: The Economic Dilemma. New York: Twentieth Century Fund.
  2. Baumol, W. J. (1967). Macroeconomics of unbalanced growth: The anatomy of urban crisis. American Economic Review, 57(3), 415–426.
  3. Baumol, W. J., Blackman, S. A. B., & Wolff, E. N. (1985). Unbalanced growth revisited: Asymptotic stagnancy and new evidence. American Economic Review, 75(4), 806–817.
  4. Baumol, W. J. (1993). Health care, education and the cost disease: A looming crisis for public choice. Public Choice, 77(1), 17–28.
  5. Baumol, W. J. (2012). The Cost Disease: Why Computers Get Cheaper and Health Care Doesn't. New Haven: Yale University Press.
  6. Fourastié, J. (1949). Le grand espoir du XXe siècle. Paris: Presses Universitaires de France.
  7. Nordhaus, W. D. (2008). Baumol's diseases: A macroeconomic perspective. B.E. Journal of Macroeconomics, 8(1), Article 9.
  8. Triplett, J. E., & Bosworth, B. P. (2003). Productivity measurement issues in services industries: 'Baumol's disease' has been cured. FRBNY Economic Policy Review, 9(3), 23–33.
  9. Ngai, L. R., & Pissarides, C. A. (2007). Structural change in a multisector model of growth. American Economic Review, 97(1), 429–443.
  10. Hartwig, J. (2011). Testing the Baumol–Nordhaus model with EU KLEMS data. Review of Income and Wealth, 57(3), 471–489.
  11. Herrendorf, B., Rogerson, R., & Valentinyi, Á. (2014). Growth and structural transformation. In P. Aghion & S. N. Durlauf (Eds.), Handbook of Economic Growth, Vol. 2 (pp. 855–941). Amsterdam: Elsevier.
  12. Helland, E., & Tabarrok, A. (2019). Why Are the Prices So D*mn High? Arlington, VA: Mercatus Center.
  13. Aghion, P., Jones, B. F., & Jones, C. I. (2019). Artificial intelligence and economic growth. In A. Agrawal, J. Gans & A. Goldfarb (Eds.), The Economics of Artificial Intelligence (pp. 237–282). Chicago: University of Chicago Press.

この理論を使ったレポート・資料(韓国語)

この理論だけを扱った資料はまだありませんが、CampusDown 資料室(韓国語)で関連レポートを検索できます。

レポートをもっと探す・「보몰의 비용병」の検索結果 →
バラッサ=サミュエルソン効果貿易財部門の急速な生産性向上が賃金と非貿易財の価格を押し上げ、豊かな国の物価水準を高め実質為替レートを増価させるというバラッサ=サミュエルソン効果の意味と起源、理論構造、ボーモル効果との関係、実証研究と政策的含意を解説します。📈 経済学オランダ病天然資源の輸出が急増すると通貨高で製造業の競争力が弱まるオランダ病の意味と由来、コーデン=ニアリー・モデルの資源移動効果と支出効果、実証研究、援助や資源の呪いとの関係、学界で議論されてきた政策対応を解説します。📈 経済学フィリップス曲線フィリップス曲線の解説:フィリップス(1958)の英国の失業率と賃金上昇率の関係、サミュエルソンとソローの政策メニュー、フリードマンとフェルプスの期待で修正されたフィリップス曲線と自然失業率、1970年代のスタグフレーション、平坦化をめぐる議論。📈 経済学要素賦存理論(ヘクシャー=オリーン)ヘクシャー=オリーンの要素賦存理論:各国は豊富な生産要素を集約的に使う財に比較優位をもつ。仮定、リカードとの対比、要素価格均等化、ストルパー=サミュエルソン定理、レオンチェフの逆説。📈 経済学経路依存性過去の小さな出来事や選択がその後の結果を長く制約するという経路依存性の意味、デイヴィッドのQWERTY配列の事例とアーサーの収穫逓増・ロックインのモデル、ノースの制度経済学、政治学・歴史社会学の決定的分岐点、リーボウィッツとマーゴリスの反論、組織の経路依存性を解説します。📈 経済学

あわせて読みたい理論

最新記事すべて見る ›

大学の勉強・課題に役立つ新着記事(韓国語)

この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。