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オランダ病

📈 経済学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
オランダ病とは、天然資源などある部門の輸出ブームが通貨価値を押し上げ、労働と資本を引き寄せることで、製造業など他の輸出産業が縮小する現象です。1959年に巨大ガス田が発見された後のオランダで製造業が低迷した経験から名付けられました。
目次
  1. 1. 由来と基本概念
  2. 2. コーデン=ニアリー・モデル
  3. 3. 実証研究と政策論議
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

由来と基本概念

オランダは1959年にフローニンゲンで当時欧州最大の天然ガス田を発見し、1960〜70年代にガス輸出が大きく伸びました。ところがギルダー高と賃金上昇が進むにつれて製造業の雇用が減り、失業が増えました。英誌『エコノミスト』(1977年)はこの現象を「オランダ病」と名付けました。要点は、ある部門の好況が経済全体にとって良いことばかりではなく、貿易財の生産構造を変えて他の輸出部門を押し出しうるという点です。この考え方の源流は、貿易財と非貿易財の相対価格すなわち実質為替レートが対内・対外均衡を左右するとしたソルター(1959年)とスワン(1960年)の「従属経済」モデルにあります。

コーデン=ニアリー・モデル

コーデンとニアリー(1982年)は、経済をブーム部門(石油・ガスなど)、停滞する貿易財部門(製造業など)、非貿易財部門(サービスなど)に分けてオランダ病を定式化しました。第一の「資源移動効果」は、ブーム部門の高い収益が労働と資本を引き寄せ、製造業から生産要素が流出する直接的な脱工業化です。第二の「支出効果」は、増えた所得がサービスなど非貿易財の需要を高めてその価格を押し上げるもので、これは実質為替レートの上昇と同じ意味を持ちます。貿易財の価格は国際市場で決まるため、製造業はコスト上昇と価格競争力の低下という二重の圧力を受けます。コーデン(1984年)はこの枠組みを整理し、固定相場制でも国内物価の上昇を通じて同じ結果になると論じました。ファン・ワインベルヘン(1984年)とクルーグマン(1987年)は、製造業に「やりながら学ぶ」効果があれば、一時的な縮小でも長期的な生産性の損失につながりうると指摘しました。

実証研究と政策論議

サックスとワーナー(2001年)は資源輸出の比率が高い国ほど成長率が低いという「資源の呪い」を報告し、オランダ病を主要な経路に挙げました。イスマイル(2010年)は石油輸出国で原油高が製造業の生産を減らす証拠を、ハーディングとベナブルズ(2016年)は資源輸出1ドルが非資源輸出を約0.7ドル減らすという推計を示しました。ラジャンとスブラマニアン(2011年)は、大規模な海外援助も似た経路で輸出製造業の成長を鈍らせうると分析しました。一方、ノルウェーのように資源収入をソブリン・ウェルス・ファンドに積み立てて海外に投資し、国内支出を徐々に増やした国は衝撃を和らげたと評価されることが多いです(ファン・デル・プルーフ、2011年)。現在この概念は資源国だけでなく、海外送金、観光ブーム、大規模な資本流入の分析にも用いられています。

よくある質問

オランダ病を簡単に言うと?
資源輸出で多額の資金が流入すると通貨と賃金が上がり、製造業など他の輸出産業が価格競争力を失って縮小する現象です。
オランダ病と資源の呪いは同じ意味ですか?
資源の呪いは資源の豊かな国の成長がかえって低迷する現象全般を指し、オランダ病はその原因のうち為替レートと産業構造を通じた経済的な経路を指します。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. The Economist. (1977, November 26). The Dutch disease. The Economist, 82–83.
  2. Corden, W. M., & Neary, J. P. (1982). Booming sector and de-industrialisation in a small open economy. Economic Journal, 92(368), 825–848.
  3. Corden, W. M. (1984). Booming sector and Dutch disease economics: Survey and consolidation. Oxford Economic Papers, 36(3), 359–380.
  4. Salter, W. E. G. (1959). Internal and external balance: The role of price and expenditure effects. Economic Record, 35(71), 226–238.
  5. Swan, T. W. (1960). Economic control in a dependent economy. Economic Record, 36(73), 51–66.
  6. van Wijnbergen, S. (1984). The 'Dutch disease': A disease after all? Economic Journal, 94(373), 41–55.
  7. Krugman, P. (1987). The narrow moving band, the Dutch disease, and the competitive consequences of Mrs. Thatcher. Journal of Development Economics, 27(1–2), 41–55.
  8. Sachs, J. D., & Warner, A. M. (2001). The curse of natural resources. European Economic Review, 45(4–6), 827–838.
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  11. van der Ploeg, F. (2011). Natural resources: Curse or blessing? Journal of Economic Literature, 49(2), 366–420.
  12. Harding, T., & Venables, A. J. (2016). The implications of natural resource exports for nonresource trade. IMF Economic Review, 64(2), 268–302.
  13. Gylfason, T., Herbertsson, T. T., & Zoega, G. (1999). A mixed blessing: Natural resources and economic growth. Macroeconomic Dynamics, 3(2), 204–225.

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この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。