フローとは
フロー(flow)とは、ある活動に完全に入り込み、集中が極まり、時間の感覚が変わり、活動そのものが報酬のように感じられる最適な経験の状態のことです。ハンガリー出身のアメリカの心理学者ミハイ・チクセントミハイが研究しました。インタビューした人々がこの状態を「流れに乗っているような感じ」と表現したことから、この名がつきました。スポーツでいう「ゾーンに入る」もよく似た状態です。日本では『フロー体験 喜びの現象学』の邦題で紹介されました。
- 意味
- 活動に完全に没頭した最適経験
- 研究者
- ミハイ・チクセントミハイ
- 主な条件
- 高い挑戦と高いスキルのバランス
- 関連概念
- 内発的動機づけ、ポジティブ心理学
チクセントミハイの研究
チクセントミハイは画家やロッククライマー、チェスプレーヤー、外科医などにインタビューし、お金や名声がほとんど得られなくても活動そのものに深くのめり込む経験に注目しました。のちに経験サンプリング法(ESM)を開発しました。参加者がポケットベルを持ち歩き、合図が鳴るたびにそのとき何をしていて、どんな気分かを記録する方法です。
人は休んでいるときより、働いているときのほうがフローを多く経験していました。チクセントミハイとルフェーヴル(1989)が78人の働く人を経験サンプリング法で調べたところ、フローは余暇よりも仕事中にずっと多く報告されました。それでも人々は、仕事よりも余暇の時間を望んでいました。
これは「仕事のパラドックス」と呼ばれます。テレビを見るような受け身の余暇は気楽ですが、フローはほとんど生みませんでした。
挑戦とスキルのバランス
フローは、課題の難しさ(挑戦)と自分の能力(スキル)がともに高く、つり合っているときに起こりやすくなります。
| 挑戦 | スキル | 経験の状態 |
|---|---|---|
| 高い | 低い | 不安 |
| 低い | 高い | 退屈(リラックス) |
| 低い | 低い | 無気力 |
| 高い | 高い | フロー |
フローの特徴
- 明確な目標とすぐに返ってくるフィードバックがある
- 行為と意識が一体になったように感じる
- 心配や自意識が消える
- 時間の感覚が変わる:数時間が数分のように感じられることもある
- 活動そのものが目的になる自己目的的な経験になる
自分からやりたくて取り組む動機づけについては、メタ認知と内発的動機づけや自己決定理論も参考にしてください。
勉強や仕事でフローに入るには
- 目標を小さく分ける:「試験範囲を終わらせる」ではなく「30分で過去問を10問」のように決めます。
- 難易度を調整する:簡単すぎれば少し難しく、難しすぎれば段階に分けます。
- すぐにフィードバックを得る:解いたらすぐに答え合わせをすると、没頭しやすくなります。
- 気が散るものを減らす:スマホの通知を切り、ひとつのことに集中します。
ただし、フローはいつもよいものとは限りません。ゲームや仕事にのめり込みすぎると健康や人間関係を損なうことがあり、過度の仕事への没頭はバーンアウト(燃え尽き症候群)につながることもあります。
よくある質問
- フローとは?
- ある活動に完全に没頭して時間を忘れ、活動そのものに楽しさを感じる最適な経験の状態です。
- フローはどんなときに起こりますか?
- 課題の挑戦レベルと自分のスキルがともに高くつり合い、目標が明確でフィードバックがすぐに得られるときに起こりやすくなります。
- フロー理論を提唱したのはだれですか?
- ハンガリー出身のアメリカの心理学者、ミハイ・チクセントミハイです。
参考文献
- Csikszentmihalyi, M. (1990). Flow: The psychology of optimal experience. Harper & Row.
- Csikszentmihalyi, M., & LeFevre, J. (1989). Optimal experience in work and leisure. Journal of Personality and Social Psychology, 56(5), 815–822.
