概要
ポートフォリオ理論(現代ポートフォリオ理論)は、アメリカの経済学者ハリー・マーコウィッツが1952年に『ジャーナル・オブ・ファイナンス』の論文「ポートフォリオ選択」で示し、1959年の同名の著書で発展させた投資理論です。「卵を一つのかごに盛るな」という直観を数学的に整理して現代ファイナンスの出発点となり、マーコウィッツは1990年にミラー、シャープとともにノーベル経済学賞を受賞しました。
平均・分散モデル
マーコウィッツは、投資家は期待収益率が高いほど、リスクが低いほど好むと仮定し、リスクを収益率の分散(または標準偏差)で測りました。ポートフォリオの期待収益率は各資産の期待収益率の加重平均ですが、ポートフォリオの分散は各資産の分散だけでなく、資産どうしの共分散(相関)にも左右されます。
分散投資の効果
2つの資産の相関係数が+1なら組み合わせてもリスクは減りませんが、+1より小さければポートフォリオの標準偏差は各資産の標準偏差の加重平均より小さくなります。相関係数が-1なら、理論上リスクをゼロにすることもできます。そのため収益率だけでなく、資産どうしがどれだけ一緒に動くかが重要になります。
効率的フロンティア
考えられるすべてのポートフォリオのうち、同じリスクで期待収益率が最も高いもの、同じ期待収益率でリスクが最も低いものを集めると、リスク・リターン平面上に曲線が描かれます。これを効率的フロンティアと呼びます。投資家はこの線上で、自分のリスク選好(無差別曲線)に合う点を選びます。
システマティック・リスクとアンシステマティック・リスク
- アンシステマティック・リスク(個別リスク):特定企業の事故や業績のように個々の資産に固有のリスクで、銘柄数を増やす分散投資で減らせます。
- システマティック・リスク(市場リスク):景気、金利、戦争のように市場全体に影響するリスクで、分散投資では取り除けません。
トービンの分離定理とCAPM
トービン(1958)は、無リスク資産を加えるとすべての投資家が同じ危険資産ポートフォリオを持ち、無リスク資産との配分だけをリスク選好に応じて変えるという分離定理を示しました。シャープ(1964)らはこれを市場均衡へと拡張し、システマティック・リスク(ベータ)だけが報われるとする資本資産価格モデル(CAPM)をつくりました。
限界
期待収益率や共分散を正確に推定するのは難しく、入力値が少し変わるだけで最適ポートフォリオが大きく変わります。また収益率が正規分布に従うという仮定は、金融危機のような極端な損失を過小評価します。危機の際には資産間の相関が高まり、分散の効果が弱まるという指摘もあります。投資家が常に合理的とは限らないという批判は行動ファイナンスで、価格が情報を反映するかどうかは効率的市場仮説で扱います。
出典確認日:2026-10-16
参考文献
- Markowitz, H. (1952). Portfolio selection. Journal of Finance, 7(1), 77–91.
- Markowitz, H. M. (1959). Portfolio Selection: Efficient Diversification of Investments. New York: Wiley.
- Tobin, J. (1958). Liquidity preference as behavior towards risk. Review of Economic Studies, 25(2), 65–86.
- Sharpe, W. F. (1964). Capital asset prices: A theory of market equilibrium under conditions of risk. Journal of Finance, 19(3), 425–442.