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マネタリズム

📈 経済学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
マネタリズムは、貨幣供給量の変化が短期的には生産と雇用に、長期的には物価に決定的な影響を与えるとし、中央銀行は裁量ではなく貨幣量を一定の率で増やすルールに従うべきだと主張したマクロ経済学派です。ミルトン・フリードマンが1950〜60年代に主導しました。
目次
  1. 1. 中心的命題
  2. 2. 金融史、ルールと自然失業率
  3. 3. 政策の実験、限界と遺産
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

中心的命題

1950年代の主流のケインズ経済学は財政政策を重視し、貨幣の役割を低く見ていました。フリードマン(1956年)は「貨幣数量説:再説」で貨幣数量説を貨幣需要の理論として再定式化し、貨幣需要は所得や利子率などに対して安定的だと主張しました。貨幣需要が安定的であれば、貨幣量の変化は名目所得の変化へと予測可能な形でつながります。ブルナー(1968年)はこの立場を「マネタリズム」と呼びました。その中心的命題は、第一に貨幣増加率の変動が名目所得の変動の主な原因であること、第二にその効果は「長く可変的なラグ」を伴って現れること、第三に長期的には貨幣は実物変数に影響しない中立的な存在であり、「インフレはいつでもどこでも貨幣的現象」だということです。

金融史、ルールと自然失業率

フリードマンとシュワルツ(1963年)の『米国金融史 1867〜1960』は、米国の景気循環の主要な局面が貨幣量の変動と重なっていることを膨大な資料で示しました。特に大恐慌は、連邦準備制度が銀行危機の中で貨幣量が約3分の1減少するのを放置した「大収縮」の結果だと解釈しました。バーナンキ(2002年)はフリードマンの90歳の誕生日の講演で「おっしゃる通りです。私たちがやったのです」とこの解釈を認めました。政策処方としてフリードマン(1960年)は、ラグと不確実性のため裁量的な微調整はかえって景気を不安定にするとして、貨幣量を毎年一定の率で増やす「k%ルール」を提案しました。またフリードマン(1968年)とフェルプス(1967年)は、失業とインフレのトレードオフは長期的には消え、失業率は自然失業率に戻るという期待で拡張されたフィリップス曲線を示しました。1970年代のスタグフレーションはこの予測を裏づけ、マネタリズムの影響力を大きく高めました。

政策の実験、限界と遺産

1979年、ボルカー議長の連邦準備制度と英国のサッチャー政権は通貨供給量目標を導入し、高金利と景気後退を代償にインフレを大きく下げました。しかし金融革新によって貨幣の流通速度と貨幣需要が不安定になり、貨幣量と所得の関係が揺らぎました。グッドハート(1975年)は、統制の目標とされた統計指標はその関係が崩れるという「グッドハートの法則」を指摘し、プール(1970年)は貨幣需要ショックが大きいときは金利目標の方が優れていることを示しました。結局1980年代半ば以降、各国の中央銀行は貨幣量目標を捨てて金利を操作目標としました(レイドラー、1981年)。それでもマネタリズムの遺産は大きいものです。インフレは金融政策の責任だという認識、ルールと信認の重要性(キッドランドとプレスコット、1977年)、長期的トレードオフの否定は、テイラー・ルール、インフレ目標政策、「新しい新古典派総合」(グッドフレンドとキング、1997年)へと引き継がれました。

よくある質問

マネタリズムを簡単に言うと?
景気と物価を左右する最も重要な要因は世の中に出回るお金の量なので、中央銀行はその都度判断するより、お金の量を一定のペースで増やすルールを守るべきだという経済学派です。
マネタリズムは今も使われていますか?
貨幣量を直接の目標とする政策は1980年代以降ほぼ放棄されましたが、インフレは金融政策の責任だという考えやルールと信認の重視は、今日のインフレ目標政策に受け継がれています。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Friedman, M. (1956). The quantity theory of money: A restatement. In M. Friedman (Ed.), Studies in the Quantity Theory of Money (pp. 3–21). Chicago: University of Chicago Press.
  2. Friedman, M., & Schwartz, A. J. (1963). A Monetary History of the United States, 1867–1960. Princeton: Princeton University Press.
  3. Friedman, M. (1968). The role of monetary policy. American Economic Review, 58(1), 1–17.
  4. Phelps, E. S. (1967). Phillips curves, expectations of inflation and optimal unemployment over time. Economica, 34(135), 254–281.
  5. Brunner, K. (1968). The role of money and monetary policy. Federal Reserve Bank of St. Louis Review, 50(7), 9–24.
  6. Friedman, M. (1960). A Program for Monetary Stability. New York: Fordham University Press.
  7. Laidler, D. (1981). Monetarism: An interpretation and an assessment. Economic Journal, 91(361), 1–28.
  8. Goodhart, C. A. E. (1975). Problems of monetary management: The U.K. experience. Papers in Monetary Economics (Vol. 1). Sydney: Reserve Bank of Australia.
  9. Poole, W. (1970). Optimal choice of monetary policy instruments in a simple stochastic macro model. Quarterly Journal of Economics, 84(2), 197–216.
  10. Kydland, F. E., & Prescott, E. C. (1977). Rules rather than discretion: The inconsistency of optimal plans. Journal of Political Economy, 85(3), 473–491.
  11. Bernanke, B. S. (2002). On Milton Friedman's ninetieth birthday. Remarks at the Conference to Honor Milton Friedman, University of Chicago, November 8.
  12. Nelson, E. (2020). Milton Friedman and Economic Debate in the United States, 1932–1972 (2 vols.). Chicago: University of Chicago Press.
  13. Goodfriend, M., & King, R. G. (1997). The new neoclassical synthesis and the role of monetary policy. NBER Macroeconomics Annual, 12, 231–283.

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この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。