カバー付き金利平価(CIP)
ある投資家が、円を1年間日本で預金する方法と、直物レートでドルを買って米国で預金し、1年後に円に戻す方法を比べるとします。1年後の為替レートを今日の先物為替予約で固定すれば、どちらの方法にも為替リスクはないため、裁定取引の余地がないためには収益が等しくなければなりません。この条件を「カバー付き金利平価」と呼び、近似的に「先物プレミアム率=国内金利-海外金利」と表します。つまり金利の高い通貨は先物市場でディスカウントで取引されます。ケインズ(1923年)は『貨幣改革論』で先物為替市場のこの関係を説明し、フレンケルとレビッチ(1975年)は、取引コストを考慮すればCIPはおおむね成立し、裁定利益はほとんど残らないという実証結果を示しました。CIPは国際金融で最もよく成立する関係の一つとみなされてきました。
カバーなし金利平価(UIP)とフォワード・ディスカウント・パズル
先物為替でリスクをヘッジしない場合には、将来の直物レートに対する「予想」が入ってきます。「カバーなし金利平価」は、リスク中立的な投資家を仮定すると、2国間の金利差が予想される為替の変化率に等しくなるという条件で、金利の高い通貨はその分だけ将来減価すると予想されることを意味します。この関係は購買力平価説やフィッシャー効果と組み合わさって為替レート決定理論の基礎となり、ドーンブッシュ(1976年)のオーバーシューティング・モデルもUIPを中核的な仮定としています。しかしハンセンとホドリック(1980年)、ファーマ(1984年)は、実際のデータでは高金利通貨が予想どおりに減価せず、むしろ増価する傾向があることを示しました。これを「フォワード・ディスカウント・パズル」または「ファーマ・パズル」と呼びます。フルートとセイラー(1990年)、エンゲル(1996年)は、これをリスク・プレミアムや期待形成の誤りで説明しようとする研究を整理し、チンとメレディス(2004年)は長期の視野ではUIPがよりよく当てはまるという結果を報告しました。
キャリー・トレードと最近の研究
UIPが短期的に成立しないということは、低金利通貨で借りて高金利通貨に投資する「キャリー・トレード」が平均的に利益を生むことを意味します。ブルネルマイヤー、ナーゲル、ペダーセン(2008年)は、この収益は平時には安定しているものの危機時に急激な損失が生じる「通貨クラッシュ・リスク」への対価だと分析し、ラスティグとヴェルドラン(2007年)は高金利通貨が消費成長リスクにより多くさらされている点からリスク・プレミアムを説明しました。一方、2008年の世界金融危機以降は、長く堅固だったCIPさえも体系的に崩れました。ドゥ、テッパー、ヴェルドラン(2018年)は、銀行規制の強化でバランスシートのコストが高まり裁定取引が制約されたことが、持続的なCIP乖離の原因だと分析しました。金利平価説は国際金融のトリレンマや金利の期間構造理論とともに、金融政策、資本移動、為替レートの関係を分析する中核的な枠組みとして用いられています。
よくある質問
- 金利平価説を簡単に言うと?
- 資本が自由に行き来できるなら、どの国の通貨に投資しても、為替の変化まで考慮した収益は同じになるはずだという理論です。
- CIPとUIPの違いは何ですか?
- CIPは先物為替予約で為替リスクを取り除いた場合の平価で、UIPは為替リスクをそのままにして将来の為替レートの予想を用いる平価です。CIPはおおむねよく成立してきましたが、UIPは短期的にしばしば外れます。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
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