購買力平価(PPP)
カッセル(1918)がまとめた購買力平価は、同じ財はどこでも同じ価格であるべきだという一物一価の法則から出発します。絶対的PPPは為替レートが両国の物価水準の比に等しいとし、相対的PPPは為替レートの変化率が両国のインフレ率の差に等しいとします。エコノミスト誌のビッグマック指数はその簡単な例です。ただし輸送費、関税、非貿易財のため短期ではうまく当てはまらず、ロゴフ(1996)はPPPからの乖離が半減するのに3〜5年かかるという研究をまとめました。
金利平価
- カバー付き金利平価(CIP):両国の金利差は、先物レートと直物レートの差(先物プレミアムまたはディスカウント)に等しくなります。
- カバーなし金利平価(UIP):金利の高い国の通貨は、金利差の分だけ減価すると予想されます。実際には高金利通貨がむしろ増価することが多く、これは先物プレミアム・パズルと呼ばれます。
国際収支アプローチとマネタリー・モデル
国際収支アプローチは、経常収支と資本収支から生じる外国為替の需要と供給によって為替レートを説明します。1970年代に変動相場制が始まってから登場したマネタリー・モデルは、PPPと貨幣需要関数を組み合わせ、貨幣供給が増えるか実質所得が減ると、その国の通貨が減価すると考えます。
ドーンブッシュのオーバーシューティング・モデル
ドーンブッシュ(1976)は、財の価格はゆっくり調整される一方、資産市場と為替レートは即座に調整される点に注目しました。貨幣供給が急に増えると金利が下がり、金利平価が成り立つためには将来その通貨が増価すると予想されなければならないため、為替レートは長期均衡以上に減価したあと徐々に戻ります。このモデルは、変動相場制のもとで為替レートの変動がなぜこれほど大きいのかを説明します。
実証上の限界
ミースとロゴフ(1983)は、マネタリー・モデルなどの構造モデルが1〜12か月先の為替レート予測で単純なランダムウォークより優れていないことを示しました。その後の研究でも、短期の為替レートは期待、リスク・プレミアム、政策ニュースに大きく左右されることが強調され、ファンダメンタルズに基づく理論は主に長期の方向を説明するのに用いられています。
参考文献
- Cassel, G. (1918). Abnormal deviations in international exchanges. The Economic Journal, 28(112), 413-415.
- Dornbusch, R. (1976). Expectations and exchange rate dynamics. Journal of Political Economy, 84(6), 1161-1176.
- Meese, R. A., & Rogoff, K. (1983). Empirical exchange rate models of the seventies: Do they fit out of sample? Journal of International Economics, 14(1-2), 3-24.
- Rogoff, K. (1996). The purchasing power parity puzzle. Journal of Economic Literature, 34(2), 647-668.
- Krugman, P. R., Obstfeld, M., & Melitz, M. J. (2018). International Economics: Theory and Policy (11th ed.). Pearson.