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為替レートのオーバーシューティング

📈 経済学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
為替レートのオーバーシューティング・モデルは、財の価格はゆっくりとしか調整されない一方で金融市場は即座に反応するため、通貨供給量の増加のような通貨ショックが起きると、為替レートが新たな長期均衡水準を一時的に超えて大きく減価し、その後しだいに均衡へ戻ると説明する国際マクロ経済学のモデルです。ルディガー・ドーンブッシュが1976年に提示しました。
目次
  1. 1. 背景とモデルの構造
  2. 2. オーバーシューティングの仕組み
  3. 3. 実証論争とその後の展開
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

背景とモデルの構造

1973年にブレトンウッズ体制が崩れ、主要通貨が変動相場制に移ると、為替レートは物価や経常収支といったファンダメンタルズよりもはるかに大きく変動しました。ルディガー・ドーンブッシュ(1976年)は、市場の非合理性を仮定せずにこの変動を説明するモデルを示しました。このモデルはマンデル=フレミング・モデル(マンデル、1963年;フレミング、1962年)の資本移動の仮定に合理的期待を組み合わせたもので、三つの要素からなります。長期には購買力平価が成り立ち、金融市場ではカバーなし金利平価が常に成り立つ一方、財の価格は短期的に硬直的だという点です。

オーバーシューティングの仕組み

中央銀行が通貨供給量を恒久的に増やしたとしましょう。長期には物価がその分だけ上がり、為替レートも同じ割合で減価するはずです。しかし短期には物価がすぐには上がらないため実質貨幣量が増え、貨幣市場の均衡のために国内金利が下がります。金利が海外より低くなっても投資家が国内資産を持ち続けるには、将来自国通貨が増価するという期待が必要です。そのためには現在の為替レートが長期均衡よりも大きく減価していなければならず、為替レートはショック直後に長期水準を「行き過ぎる」オーバーシューティングを示し、その後物価の上昇とともにゆっくり増価して均衡へ戻ります。フランケル(1979年)は、このモデルにインフレ期待を加え、実質金利差で為替レートを説明するモデルへと発展させました。

実証論争とその後の展開

ミースとロゴフ(1983年)は、ドーンブッシュ・モデルを含む1970年代の構造的為替モデルが、標本外予測で単純なランダムウォークに勝てないことを示して大きな衝撃を与え、ロッシ(2013年)はその後の為替予測可能性の研究を整理しました。アイケンバウムとエバンズ(1995年)は、米国の金融引き締め後にドルが即座にではなく1〜3年かけて増価し続けるという「遅延オーバーシューティング」のパズルを報告しました。これに対しファウストとロジャーズ(2003年)、ショルとウーリッヒ(2008年)は識別の方法によって結果が変わると考え、ビョルンランド(2009年)は小規模開放経済のデータでドーンブッシュの予測に沿った即時のオーバーシューティングを確認しました。オブストフェルドとロゴフ(1995年)はミクロ的基礎を持つ新しい開放マクロ経済学のモデルで硬直価格の論理を受け継ぎ、ロゴフ(2002年)はこのモデルが25年を経てもなお国際マクロ経済学の出発点だと評価しました。エンゲル(2014年)は、カバーなし金利平価がデータではうまく成り立たないという問題を整理しています。

よくある質問

オーバーシューティングを簡単に言うと?
通貨ショックのあと、モノの値段はゆっくり変わるのに為替レートはすぐに反応するため、最初は最終的な水準より大きく動き、その後しだいに戻ってくるという考え方です。
なぜオーバーシューティングが起きるのですか?
価格が硬直的なため短期に金利が下がり、金利平価を満たすには将来の通貨高の期待が必要になるので、現在の為替レートが長期水準以上に減価するからです。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Dornbusch, R. (1976). Expectations and exchange rate dynamics. Journal of Political Economy, 84(6), 1161–1176.
  2. Mundell, R. A. (1963). Capital mobility and stabilization policy under fixed and flexible exchange rates. Canadian Journal of Economics and Political Science, 29(4), 475–485.
  3. Fleming, J. M. (1962). Domestic financial policies under fixed and under floating exchange rates. IMF Staff Papers, 9(3), 369–380.
  4. Frankel, J. A. (1979). On the mark: A theory of floating exchange rates based on real interest differentials. American Economic Review, 69(4), 610–622.
  5. Meese, R. A., & Rogoff, K. (1983). Empirical exchange rate models of the seventies: Do they fit out of sample? Journal of International Economics, 14(1–2), 3–24.
  6. Eichenbaum, M., & Evans, C. L. (1995). Some empirical evidence on the effects of shocks to monetary policy on exchange rates. Quarterly Journal of Economics, 110(4), 975–1009.
  7. Obstfeld, M., & Rogoff, K. (1995). Exchange rate dynamics redux. Journal of Political Economy, 103(3), 624–660.
  8. Rogoff, K. (2002). Dornbusch's overshooting model after twenty-five years. IMF Staff Papers, 49(Special Issue), 1–34.
  9. Faust, J., & Rogers, J. H. (2003). Monetary policy's role in exchange rate behavior. Journal of Monetary Economics, 50(7), 1403–1424.
  10. Scholl, A., & Uhlig, H. (2008). New evidence on the puzzles: Results from agnostic identification on monetary policy and exchange rates. Journal of International Economics, 76(1), 1–13.
  11. Bjørnland, H. C. (2009). Monetary policy and exchange rate overshooting: Dornbusch was right after all. Journal of International Economics, 79(1), 64–77.
  12. Engel, C. (2014). Exchange rates and interest parity. In G. Gopinath, E. Helpman & K. Rogoff (Eds.), Handbook of International Economics, Vol. 4 (pp. 453–522). Amsterdam: Elsevier.
  13. Rossi, B. (2013). Exchange rate predictability. Journal of Economic Literature, 51(4), 1063–1119.

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この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。