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コブラ効果

📈 経済学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
コブラ効果とは、ある問題を解決するために導入したインセンティブが人々の戦略的な反応を呼び、かえって問題を悪化させてしまう現象を指します。イギリス植民地時代のインド・デリーでコブラを減らそうと死んだコブラに報奨金を出したところ、人々がコブラを飼育するようになり、制度を廃止すると飼っていたコブラを放したため数がかえって増えた、という逸話に由来します。ドイツの経済学者ホルスト・ジーベルトが2001年に同名の著書で広めました。
目次
  1. 1. 逸話と歴史的な根拠
  2. 2. インセンティブ理論から見た構造
  3. 3. 政策の事例と教訓
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

逸話と歴史的な根拠

コブラ報奨金の話は、ジーベルト(2001年)が経済政策の誤りを説明する代表例として取り上げたことで広まりましたが、当時の記録で確かめられた事実というより、語り継がれてきた逸話に近いものです。一方、同じ構造をもつ事例は歴史的によく記録されています。ヴァン(2003年)は史料にもとづき、1902年にフランス植民地当局がハノイでネズミを減らそうとネズミの尻尾に報奨金を出したところ、人々は尻尾だけを切ってネズミを逃がして繁殖させたり、ネズミを飼育したりしたことを明らかにしました。社会学者マートン(1936年)は、目的をもった社会的行為が、無知や誤り、目先の利益へのこだわりなどによって意図せざる結果を生むという理論を示しましたが、コブラ効果はそのなかでもインセンティブが逆効果を生む特殊なケースだといえます。

インセンティブ理論から見た構造

カー(1975年)は、組織がBを望みながら実際にはAに報酬を与えている愚かさを指摘しましたが、これはコブラ効果の核心的な構造と同じです。政策の目標はコブラの数を減らすことだったのに、報酬は持ち込まれたコブラの数に対して支払われていたからです。ホルムストロームとミルグロム(1991年)のマルチタスク・エージェンシー理論は、測定できる仕事にだけ強いインセンティブを与えると、測定しにくい仕事がおろそかになることを示しました。グッドハートの法則(グッドハート、1975年)とキャンベルの法則(キャンベル、1979年)は、指標が目標になると人々が指標を操作し、指標が本来の意味を失うと警告しており、ルーカス(1976年)の批判も、政策が変われば人々の行動ルールそのものが変わることを強調しています。ニーズィーとルスティチーニ(2000年)は、イスラエルの保育園で迎えに遅れる親に罰金を科したところ、かえって遅刻が増えたことを示し、金銭的なインセンティブが社会規範を押しのけてしまいうることを明らかにしました。

政策の事例と教訓

デイヴィス(2008年)は、メキシコシティが大気汚染を減らすためにナンバープレートの末尾の数字によって曜日ごとの運転を制限したところ、人々が古くて汚染のひどい中古車を2台目として買い足したため、大気質の改善効果が現れなかったことを示しました。フッド(2006年)は、イギリスの公共サービスの成果目標による管理において、目標の数値を満たすためのゲーミングが広く見られたと分析し、ミュラー(2018年)はこうした事例を「測定の専制」としてまとめています。ニーズィー、マイヤー、レイ=ビエル(2011年)は、インセンティブが行動を変えるのに効果的な条件と、逆効果を生む条件を経済学的に検討しました。この現象は、効率の向上がかえって消費を増やすジェヴォンズのパラドックスや、安全規制が危険な行動を促すペルツマン効果とともに、政策を設計する際には人々の適応的な反応を考慮しなければならないという教訓を示しています。

よくある質問

コブラ効果を簡単に言うと?
問題を減らすためにつくった報酬の仕組みが、かえって問題を増やしてしまう現象です。コブラを捕まえてくればお金を払うことにしたら、人々がお金目当てにコブラを育て始めたという話から生まれた言葉です。
コブラの話は実際にあったことですか?
インドのコブラの話は、当時の記録で確かめられたというより、語り継がれてきた逸話に近いものです。ただし、1902年のハノイのネズミの尻尾への報奨金のように、同じ構造の出来事が実際に起きたという歴史的な記録はあります。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Merton, R. K. (1936). The unanticipated consequences of purposive social action. American Sociological Review, 1(6), 894–904.
  2. Kerr, S. (1975). On the folly of rewarding A, while hoping for B. Academy of Management Journal, 18(4), 769–783.
  3. Goodhart, C. A. E. (1975). Problems of monetary management: The U.K. experience. Papers in Monetary Economics (Vol. 1). Sydney: Reserve Bank of Australia.
  4. Campbell, D. T. (1979). Assessing the impact of planned social change. Evaluation and Program Planning, 2(1), 67–90.
  5. Holmström, B., & Milgrom, P. (1991). Multitask principal-agent analyses: Incentive contracts, asset ownership, and job design. Journal of Law, Economics, & Organization, 7(Special Issue), 24–52.
  6. Gneezy, U., & Rustichini, A. (2000). A fine is a price. Journal of Legal Studies, 29(1), 1–17.
  7. Siebert, H. (2001). Der Kobra-Effekt: Wie man Irrwege der Wirtschaftspolitik vermeidet. Stuttgart: Deutsche Verlags-Anstalt.
  8. Vann, M. G. (2003). Of rats, rice, and race: The Great Hanoi Rat Massacre, an episode in French colonial history. French Colonial History, 4, 191–203.
  9. Hood, C. (2006). Gaming in targetworld: The targets approach to managing British public services. Public Administration Review, 66(4), 515–521.
  10. Davis, L. W. (2008). The effect of driving restrictions on air quality in Mexico City. Journal of Political Economy, 116(1), 38–81.
  11. Gneezy, U., Meier, S., & Rey-Biel, P. (2011). When and why incentives (don't) work to modify behavior. Journal of Economic Perspectives, 25(4), 191–210.
  12. Muller, J. Z. (2018). The Tyranny of Metrics. Princeton: Princeton University Press.
  13. Lucas, R. E. (1976). Econometric policy evaluation: A critique. Carnegie-Rochester Conference Series on Public Policy, 1, 19–46.

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この記事は2026年10月27日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。