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ジェヴォンズのパラドックス

📈 経済学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
ジェヴォンズのパラドックスとは、ある資源を使う技術の効率が向上すると消費が減るという直観に反して、実質的な単位コストが下がり需要が拡大することで、資源の総消費がかえって増えうるという命題です。英国の経済学者ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズが1865年の『石炭問題』で初めて示しました。
目次
  1. 1. 起源:『石炭問題』
  2. 2. リバウンド効果とカズーム=ブルックス仮説
  3. 3. 実証研究と論争
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

起源:『石炭問題』

ジェヴォンズ(1865年)は、ワットの蒸気機関のように石炭をより効率的に使う技術が登場した後、英国の石炭消費がむしろ急増したと指摘しました。彼は「燃料の経済的な使用が消費の減少と同じだと考えるのは完全な考え違いである」と書いています。効率が上がると石炭から得られる動力の実質価格が下がり、新たな用途や産業が生まれて総需要が増えるという論理です。フーケとピアソン(2006年)は、7世紀にわたる英国の照明サービスのデータから、照明効率の向上とともに照明消費が爆発的に増えたことを示しました。

リバウンド効果とカズーム=ブルックス仮説

現代のエネルギー経済学では、効率向上による期待節約分の一部が需要増で相殺される現象をリバウンド効果と呼びます。リバウンドが100%を超えて総消費が増える場合がバックファイア、すなわちジェヴォンズのパラドックスです。カズーム(1980年)は家電の効率基準が期待ほどエネルギーを減らさない可能性を論じ、ブルックス(1990年)は経済全体の水準で効率向上がエネルギー消費を増やすと主張しました。ソンダース(1992年)は新古典派成長モデルの中でこれが成り立つ条件を示し、「カズーム=ブルックス仮説」と名づけました。

実証研究と論争

グリーニング、グリーン、ディフィリオ(2000年)は、家庭の暖房や自動車などの最終用途で直接リバウンド効果がおおむね10〜30%であると概観しました。スモールとヴァン・デンダー(2007年)は、米国の自動車走行のリバウンド効果が所得の上昇とともに低下したと推計しました。一方、ソレル(2009年)とアルコット(2005年)は、生産部門や経済全体の間接効果を考慮すればバックファイアの可能性は否定できないとしました。ギリンガム、ラプソン、ワグナー(2016年)とボーレンスタイン(2015年)は、リバウンド効果が効率向上の厚生上の利益を消し去るわけではなく、所得効果と代替効果を区別して評価すべきだと整理しました。

よくある質問

ジェヴォンズのパラドックスを簡単に言うと?
燃費がよくなって運転が安くなると、人々が以前より多く運転するようになり、燃料の総消費が減らない、あるいは増えることさえあるということです。
リバウンド効果と同じ意味ですか?
リバウンド効果は期待節約分が部分的に相殺される現象全般を指し、ジェヴォンズのパラドックスは相殺が100%を超えて総消費が増える極端な場合を指します。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Jevons, W. S. (1865). The Coal Question: An Inquiry Concerning the Progress of the Nation, and the Probable Exhaustion of Our Coal-Mines. London: Macmillan.
  2. Khazzoom, J. D. (1980). Economic implications of mandated efficiency in standards for household appliances. Energy Journal, 1(4), 21–40.
  3. Brookes, L. (1990). The greenhouse effect: The fallacies in the energy efficiency solution. Energy Policy, 18(2), 199–201.
  4. Saunders, H. D. (1992). The Khazzoom–Brookes postulate and neoclassical growth. Energy Journal, 13(4), 131–148.
  5. Greening, L. A., Greene, D. L., & Difiglio, C. (2000). Energy efficiency and consumption—the rebound effect—a survey. Energy Policy, 28(6–7), 389–401.
  6. Alcott, B. (2005). Jevons' paradox. Ecological Economics, 54(1), 9–21.
  7. Sorrell, S. (2009). Jevons' Paradox revisited: The evidence for backfire from improved energy efficiency. Energy Policy, 37(4), 1456–1469.
  8. Polimeni, J. M., Mayumi, K., Giampietro, M., & Alcott, B. (2008). The Jevons Paradox and the Myth of Resource Efficiency Improvements. London: Earthscan.
  9. Small, K. A., & Van Dender, K. (2007). Fuel efficiency and motor vehicle travel: The declining rebound effect. Energy Journal, 28(1), 25–51.
  10. Gillingham, K., Rapson, D., & Wagner, G. (2016). The rebound effect and energy efficiency policy. Review of Environmental Economics and Policy, 10(1), 68–88.
  11. Borenstein, S. (2015). A microeconomic framework for evaluating energy efficiency rebound and some implications. Energy Journal, 36(1), 1–21.
  12. Fouquet, R., & Pearson, P. J. G. (2006). Seven centuries of energy services: The price and use of light in the United Kingdom (1300–2000). Energy Journal, 27(1), 139–177.
  13. York, R. (2006). Ecological paradoxes: William Stanley Jevons and the paperless office. Human Ecology Review, 13(2), 143–147.

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この記事は2026年10月27日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。