発見学習とは
発見学習(discovery learning)とは、教師が結論や原理をすぐに説明するのではなく、学習者が資料を観察し、仮説を立て、検証する過程をへて、みずから原理を見つけ出すようにする学習方法です。アメリカの心理学者ジェローム・ブルーナー(J. S. Bruner)が1960年代に体系化しました。1957年のスプートニク・ショック後の教育改革のなかで書かれた『教育の過程』(1960年)が出発点です。
- 提唱者
- J. S. ブルーナー
- 中心
- 知識の構造
- カリキュラム
- らせん型カリキュラム
- 対比
- オーズベルの有意味受容学習
中心となる考え方
- 知識の構造:各教科の基本的な概念や原理のことです。ばらばらの事実よりも構造を学ぶほうが、記憶に残り、ほかの場面にも応用しやすいと考えました。
- らせん型カリキュラム:同じ基本概念を、学年が上がるにつれてより深く広く繰り返し学ぶように構成する考え方です。ブルーナーは「どの教科でも、知的に誠実な形で、どの発達段階の子どもにも効果的に教えることができる」と述べました。
- 表象の3様式:動作で理解する行為的表象、イメージで理解する映像的表象、ことばや記号で理解する象徴的表象の順に発達するため、学習者に合わせた提示が必要だとしました。
メリットと批判
| メリット | 批判 |
|---|---|
| 内発的動機づけと探究する力が育つ | 時間がかかり、授業の進度を保ちにくい |
| 原理を深く理解でき、転移しやすい | 既有知識の少ない学習者は迷ったり、誤った概念を「発見」したりする |
| 問題解決の過程そのものを学べる | 学習者間の差が広がりやすい |
メイヤー(2004年)は教師の手がかりがほとんどない純粋な発見学習は効果が低いと整理し、キルシュナー、スウェラー、クラーク(2006年)は認知負荷理論から、最小限の指導は初心者には向かないと批判しました。一方、アルフィエリらのメタ分析(2011年)は、ヒントや問いかけを与える導かれた発見学習は説明中心の授業より効果的になりうると報告しています。
日本の仮説実験授業
日本では、板倉聖宣が1963年に提唱した仮説実験授業が発見学習の考え方を生かした実践として知られています。「問題」に対して子どもが予想を立て、討論したうえで実験によって確かめる流れで、理科を中心に広がりました。教員採用試験では、ブルーナーの発見学習(帰納的・学習者主体)とオーズベルの有意味受容学習(演繹的・先行オーガナイザー)の対比がよく問われます。
ブルーナーとオーズベルはよくライバルとして紹介されます。しかし二人とも目ざしたのは「意味のある理解」でした。ちがうのはそこへ至る道すじ、つまり学習者にみずから見つけさせるか、よく組織された説明で導くかなのです。
よくある質問
- 発見学習と探究学習は同じですか?
- よく似た意味で使われます。探究学習は科学的な探究の手順をより重視することが多いです。
- 発見学習はどの子にも効果的ですか?
- 既有知識のある学習者に効果が出やすく、初心者には十分な手がかりが必要だとする研究が多くあります。
参考文献
- Bruner, J. S. (1960). The Process of Education. Harvard University Press.
- Bruner, J. S. (1961). The act of discovery. Harvard Educational Review, 31(1), 21–32.
- Mayer, R. E. (2004). Should there be a three-strikes rule against pure discovery learning? American Psychologist, 59(1), 14–19.
- Kirschner, P. A., Sweller, J., & Clark, R. E. (2006). Why minimal guidance during instruction does not work. Educational Psychologist, 41(2), 75–86.
- Alfieri, L., Brooks, P. J., Aldrich, N. J., & Tenenbaum, H. R. (2011). Does discovery-based instruction enhance learning? Journal of Educational Psychology, 103(1), 1–18.
- 板倉聖宣『仮説実験授業』仮説社, 1974.
