発見:脳が作るモルヒネ
1973年、米ジョンズ・ホプキンス大学のキャンディス・パートとソロモン・スナイダーは、脳にモルヒネが結合する「オピオイド受容体」があることを示しました。体外の薬物に合う受容体があるなら体内にも対応する物質があるはずだという推論が続き、1975年に英アバディーン大学のジョン・ヒューズとハンス・コスターリッツがブタの脳から最初の物質エンケファリンを取り出し、まもなくβエンドルフィンも見つかりました。エンドルフィンは「内因性(endogenous)」と「モルヒネ(morphine)」を合わせた言葉です。
働きとランナーズハイ
エンドルフィンは痛みの信号が脊髄や脳へ伝わるのを抑え、報酬系でドーパミンの放出を間接的に増やして安らぎや幸福感をもたらします。大けがの直後にしばらく痛みを感じない現象や、鍼やプラセボの鎮痛効果の一部もエンドルフィンで説明されます。長く走ったときの「ランナーズハイ」は、2008年にドイツの研究チームがPETで走行後の脳内オピオイド結合の増加を示し、関与が裏づけられました。ただ血中のエンドルフィンは脳に入りにくいため、近年は内因性カンナビノイドも関わるという見方が有力です。
増やす方法と誤解
中強度以上の有酸素運動、声を出して笑うこと、みんなで歌ったり踊ったりすること、辛い食べ物、マッサージなどがエンドルフィンの分泌と関係するという研究があります。これらはセロトニンやオキシトシンとともに気分を支えますが、エンドルフィンだけを増やす「裏技」はありません。気分の落ち込みが2週間以上続くなら、運動だけで乗り切ろうとせずうつ病の相談を受けることが勧められます。
この記事は一般的な健康情報であり、診断や治療に代わるものではありません。症状が続く場合は医師に相談してください。
よくある質問
- エンドルフィンとドーパミンの違いは?
- エンドルフィンは痛みを和らげ安らぎをもたらすオピオイドペプチド、ドーパミンは意欲や報酬の期待に関わる神経伝達物質です。エンドルフィンがドーパミン放出を間接的に増やすため、両者は一緒に働くこともあります。
- どれくらい運動するとランナーズハイになりますか?
- 個人差がありますが、研究では中強度以上で30分〜1時間以上走ったときに報告されることが多く、誰もがはっきり感じるわけではありません。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
- Hughes, J., Smith, T. W., Kosterlitz, H. W., et al. (1975). Identification of two related pentapeptides from the brain with potent opiate agonist activity. Nature, 258, 577–579.
- Pert, C. B., & Snyder, S. H. (1973). Opiate receptor: demonstration in nervous tissue. Science, 179(4077), 1011–1014.
- Boecker, H., et al. (2008). The runner's high: opioidergic mechanisms in the human brain. Cerebral Cortex, 18(11), 2523–2531.
