基本的な論理
すべての子はちょうど1個体の父と1個体の母をもつため、雄全体と雌全体が次世代に残す遺伝子の分け前は等しくなります。もし集団で雄が少なければ、雄1個体は平均して雌1個体より多くの子を残すため、息子を多く産む傾向をもつ親が有利になります。すると雄が増え、逆の状況では娘を産む傾向が有利になります。フィッシャー(1930年)は、このような頻度依存選択の結果、息子と娘への親の総投資が等しくなる点が安定すると考えました。息子と娘の養育コストが同じなら、その点は1対1の性比です。
歴史的起源と定式化
エドワーズ(1998年)は、この論理がフィッシャー以前から存在したことを明らかにしました。ダーウィン(1871年)は『人間の由来』初版で性比を論じましたが、第2版では複雑すぎるとして将来に委ね、ドイツのデュージング(1884年)は性比が自己調節されるという数学的議論を示しました。ショーとモーラー(1953年)はフィッシャーの論証を孫の数についての明示的なモデルとして定式化しました。この原理は、遺伝子の視点から進化的に安定な戦略を考えた初期の例とされています。
例外と性配分理論
ハミルトン(1967年)は、兄弟が同じ場所で配偶者をめぐって互いに競争する「局所的配偶者競争」があるとき、雌に偏った性比が進化することを示し、ヘレ(1985年)はイチジクコバチでこれを確かめました。トリヴァースとウィラード(1973年)は、母親の状態がよいときに息子を多く産むことが有利になりうると提案しました。トリヴァースとヘア(1976年)は、半倍数性の社会性昆虫でワーカーが好む性比と女王が好む性比が異なるという対立を予測しました。チャーノフ(1982年)、フランク(1990年)、ウェスト(2009年)はこれらの拡張を包括する性配分理論を体系化しました。
よくある質問
- フィッシャーの原理を簡単に言うと?
- 雄が少なければ息子がより多くの孫を残し、雌が少なければ娘がそうなるため、結局息子と娘がほぼ同じ割合で生まれる方向に進化するという原理です。
- 性比は常に1対1でなければならないという意味ですか?
- いいえ。この原理は息子と娘への総投資が等しくなるというもので、養育コストが異なる場合や局所的配偶者競争のような条件があれば、1対1から外れた性比が進化しえます。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
- Fisher, R. A. (1930). The Genetical Theory of Natural Selection. Oxford: Clarendon Press.
- Darwin, C. (1871). The Descent of Man, and Selection in Relation to Sex. London: John Murray.
- Düsing, C. (1884). Die Regulierung des Geschlechtsverhältnisses bei der Vermehrung der Menschen, Tiere und Pflanzen. Jenaische Zeitschrift für Naturwissenschaft, 17, 593–940.
- Shaw, R. F., & Mohler, J. D. (1953). The selective significance of the sex ratio. American Naturalist, 87(837), 337–342.
- Hamilton, W. D. (1967). Extraordinary sex ratios. Science, 156(3774), 477–488.
- Trivers, R. L., & Willard, D. E. (1973). Natural selection of parental ability to vary the sex ratio of offspring. Science, 179(4068), 90–92.
- Charnov, E. L. (1982). The Theory of Sex Allocation. Princeton: Princeton University Press.
- Edwards, A. W. F. (1998). Natural selection and the sex ratio: Fisher's sources. American Naturalist, 151(6), 564–569.
- West, S. A. (2009). Sex Allocation. Princeton: Princeton University Press.
- Hardy, I. C. W. (Ed.). (2002). Sex Ratios: Concepts and Research Methods. Cambridge: Cambridge University Press.
- Herre, E. A. (1985). Sex ratio adjustment in fig wasps. Science, 228(4701), 896–898.
- Trivers, R. L., & Hare, H. (1976). Haplodiploidy and the evolution of the social insects. Science, 191(4224), 249–263.
- Frank, S. A. (1990). Sex allocation theory for birds and mammals. Annual Review of Ecology and Systematics, 21, 13–55.
