部分が全体に似る図形
フラクタル(fractal)は、1975年にポーランド生まれのフランス・アメリカの数学者ブノワ・マンデルブロが「砕けた」を意味するラテン語fractusから作った言葉です。シダの葉は小さな葉が集まって大きな葉の形を作り、その小さな葉もさらに小さな葉からできています。このように部分を拡大すると全体に似た構造が現れ続ける性質を自己相似性といいます。数学的なフラクタルは単純な規則を無限に繰り返して作ります。線分を3等分し中央に三角形の突起を立てる操作を繰り返した「コッホ曲線」は、有限の領域に収まりながら周の長さが無限大になります。マンデルブロは1967年の論文「イギリスの海岸線の長さはどれだけか」で、物差しを短くするほど海岸線が長くなる「海岸線のパラドックス」を示し、この考えを広めました。
フラクタル次元
線は1次元、面は2次元ですが、フラクタルはその間の次元を持つことがあります。図形を1/sに縮小したN個の部分にちょうど分けられるなら、次元DはD = log N / log sで求めます。正方形は1/3の大きさの9個に分かれるのでlog 9 / log 3 = 2、コッホ曲線は1/3の大きさの4個なので約1.26次元です。次元が大きいほど空間を密に埋めることを意味します。
| 図形 | 計算 | 次元 |
|---|---|---|
| コッホ曲線 | log 4 / log 3 | ≈ 1.262 |
| シェルピンスキーの三角形 | log 3 / log 2 | ≈ 1.585 |
| メンガーのスポンジ | log 20 / log 3 | ≈ 2.727 |
| イギリス西海岸(リチャードソンの測定) | 実測 | ≈ 1.25 |
マンデルブロ集合と自然・技術の中のフラクタル
複素数cについてz → z² + cを繰り返したとき値が無限に大きくならないcの集まりがマンデルブロ集合です。1980年ごろコンピュータで初めてその姿が描かれ、境界を拡大するたびに新しい模様が現れることからフラクタルの象徴になりました。カオス理論の「ストレンジアトラクター」もフラクタル構造を持ちます。自然ではロマネスコ、木の枝、川の流れ、稲妻、雪の結晶、肺の気管支や血管が近似的なフラクタルです。枝分かれによって小さな体積に大きな表面積を収められるため、肺は約70m²(テニスコートの半分ほど)の表面積を胸の中に収めています。技術では携帯電話の小型フラクタルアンテナ、映画やゲームの山や雲の地形生成、画像圧縮などに使われます。
よくある質問
- フラクタルは本当に無限に繰り返されますか?
- 数学的なフラクタルは無限に続きますが、自然のフラクタルは細胞や原子の大きさなどの限界で止まります。そのため自然物は「ある範囲でフラクタルに近い」と表現されます。
- フラクタル次元が1.26とはどういう意味ですか?
- 線(1次元)よりは空間を多く埋めるものの、面(2次元)ほどではないという意味です。複雑に入り組んでいるほど次元が大きくなります。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
- Mandelbrot, B. B. (1967). How long is the coast of Britain? Statistical self-similarity and fractional dimension. Science, 156(3775), 636–638.
- Mandelbrot, B. B. (1982). The Fractal Geometry of Nature. W. H. Freeman.
- Falconer, K. (2014). Fractal Geometry: Mathematical Foundations and Applications (3rd ed.). Wiley.
- Gleick, J. (1987). Chaos: Making a New Science. Viking.
