のれんとのれんの減損
のれんとは、ほかの会社を買収したときに、支払った対価が受け入れた純資産の時価を上回る部分のことです。ブランドや顧客基盤、シナジーへの期待など、個別に切り出せない価値に対価を払ったと考えます。たとえば純資産の時価が700億円の会社を1,000億円で買えば、のれんは300億円です。その後、買収した事業が想定どおりに稼げないと、のれんの帳簿価額を引き下げ、差額を減損損失として計上します。これがのれんの減損です。
📌 ひと目でわかる
- 日本基準
- 20年以内で規則的に償却+減損
- IFRS
- 償却せず、毎期減損テスト
- 単位
- 資金生成単位
- 戻入れ
- のれんは不可
日本基準とIFRSのちがい
| 項目 | 日本基準 | IFRS(IAS 36) |
|---|---|---|
| 償却 | 20年以内の効果が及ぶ期間で定額償却 | 償却しない |
| 減損の判定 | 減損の兆候がある場合に、割引前将来キャッシュ・フローで判定 | 毎期(兆候がなくても)回収可能価額と比較 |
| 戻入れ | 不可 | のれんは不可 |
日本基準では毎期の償却で少しずつ費用化されるため、一度に巨額の減損が出にくい一方、IFRSでは償却がないぶん、業績悪化時に大きな減損が一気に出やすい傾向があります。IFRSを任意適用する日本企業が増えるなかで、この差は決算を見るうえで重要です。
減損テストの流れ(IFRS)
- のれんを、シナジーの恩恵を受ける資金生成単位に配分します。
- 資金生成単位の帳簿価額と回収可能価額(使用価値と、処分コスト控除後の公正価値のいずれか高い方)を比べます。
- 帳簿価額が上回れば差額を減損損失として認識し、まずのれんから減らします。
のれんの減損は「失敗した買収の通信簿」とも呼ばれます。2019年、米クラフト・ハインツはクラフトやオスカー・マイヤーのブランドなどで約154億ドルの減損を計上し、株価は1日で20%以上下落しました。大きな減損は、経営陣が買収時に高く買いすぎたと認めることでもあります。
投資家のチェックポイント
- 純資産に対するのれんの大きさ:のれんが大きいと、一度の減損で自己資本が大きく減りかねません。
- 前提条件:注記の割引率や成長率が楽観的すぎないか確認しましょう。
- キャッシュは出ていかない:減損損失は非資金費用で、営業キャッシュ・フローには直接影響しません。
よくある質問
- 日本基準でものれんの減損テストは毎年必要ですか?
- 日本基準では毎期の償却が前提で、減損の兆候がある場合に減損の判定を行います。
- 自社で育てたブランドはのれんになりますか?
- いいえ。自己創設のれんは資産計上できず、のれんは企業結合でのみ生じます。
参考文献
- IFRS Foundation, IAS 36 Impairment of Assets; IFRS 3 Business Combinations (ifrs.org).
- 한국회계기준원, K-IFRS 제1036호 「자산손상」, 제1103호 「사업결합」.
- FASB ASC 350 Intangibles—Goodwill and Other; ASU 2017-04 (Simplifying the Test for Goodwill Impairment); ASU 2014-02 (private company alternative).
- 企業会計基準委員会「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号)第32項、「固定資産の減損に係る会計基準」.
- 中华人民共和国财政部《企业会计准则第8号——资产减值》.
