名前と提唱
1950〜60年代、加速器から数百種類もの新粒子が見つかり、物理学者はそれらを整理する規則を必要としていました。1961年にマレー・ゲルマンとユヴァル・ネーマンはSU(3)対称性による分類「八道説」を示し、1964年にはゲルマンとジョージ・ツワイクがそれぞれ独立に、陽子や中性子はさらに小さな構成要素からなると提唱しました。ゲルマンはジェイムズ・ジョイスの小説『フィネガンズ・ウェイク』の一節「Three quarks for Muster Mark!」から「クォーク」と名づけました。電荷が1/3単位であることから、当初は実在ではなく計算上の道具とみなす人も少なくありませんでした。
発見と6つのフレーバー
1968年、米国SLACで電子を陽子にぶつける深非弾性散乱実験が行われ、陽子内部の点状の粒にはね返される様子が確認されました(1990年ノーベル賞)。1974年11月にはブルックヘブンとSLACの2チームがチャームクォークを含むJ/ψ粒子を同時に発見し、「11月革命」と呼ばれました。1973年に小林誠と益川敏英が3世代6種類のクォークを予言しており(2008年ノーベル賞)、1977年にボトム、1995年にフェルミ研究所で最も重いトップクォークが見つかり、すべてがそろいました。クォークはレプトンとともに標準模型の物質粒子をなし、それぞれに反物質の相棒である反クォークがあります。質量の一部はヒッグス場との相互作用から生まれます。
| クォーク | 電荷 | 質量 | 提唱・発見 |
|---|---|---|---|
| アップ | +2/3 | ~2.2 MeV | 1964 |
| ダウン | −1/3 | ~4.7 MeV | 1964 |
| チャーム | +2/3 | ~1.27 GeV | 1974 |
| ストレンジ | −1/3 | ~95 MeV | 1964 |
| トップ | +2/3 | ~173 GeV | 1995 |
| ボトム | −1/3 | ~4.18 GeV | 1977 |
色荷と閉じ込め
クォークは電荷のほかに「色荷」(赤・緑・青。実際の色とは無関係)を持ち、グルーオンをやり取りする強い相互作用で結ばれています。これを記述する量子色力学(QCD)は、1973年にグロス、ウィルチェック、ポリツァーが発見した「漸近的自由性」、つまりクォーク同士が近いほど力が弱まる性質によって完成しました(2004年ノーベル賞)。逆に離れるほど力が強くなるため、クォークを引き離そうとするとそのエネルギーで新たなクォーク対が生まれ、クォークは単独では決して観測されません(閉じ込め)。陽子の質量の大部分は、クォーク自体ではなくこの結合エネルギーに由来します。ビッグバン直後に存在したクォーク・グルーオン・プラズマは、2000年代にRHICやLHCの重イオン衝突で再現されました。
よくある質問
- 陽子はどのクォークでできていますか?
- アップクォーク2個とダウンクォーク1個(uud)です。中性子はアップ1個とダウン2個(udd)で、電荷を足すとそれぞれ+1と0になります。
- クォークより小さな粒子はありますか?
- 現在の実験精度では、クォークは内部構造を持たない点状の粒子に見えます。さらに基本的な構成要素があるという仮説もありますが、証拠はありません。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
- Gell-Mann, M. (1964). A schematic model of baryons and mesons. Physics Letters, 8(3), 214–215.
- Zweig, G. (1964). An SU(3) model for strong interaction symmetry and its breaking. CERN Report 8182/TH.401.
- Bloom, E. D., et al. (1969). High-energy inelastic e–p scattering at 6° and 10°. Physical Review Letters, 23(16), 930–934.
- Gross, D. J., & Wilczek, F. (1973). Ultraviolet behavior of non-abelian gauge theories. Physical Review Letters, 30(26), 1343–1346.
- Politzer, H. D. (1973). Reliable perturbative results for strong interactions? Physical Review Letters, 30(26), 1346–1349.
- Aubert, J. J., et al. (1974). Experimental observation of a heavy particle J. Physical Review Letters, 33(23), 1404–1406.
- CDF Collaboration (Abe, F., et al.). (1995). Observation of top quark production in p̄p collisions. Physical Review Letters, 74(14), 2626–2631.
- Joyce, J. (1939). Finnegans Wake. London: Faber and Faber.
- Particle Data Group (Navas, S., et al.). (2024). Review of Particle Physics. Physical Review D, 110, 030001.
