恒星を輝かせるしくみ
原子核はすべて正の電荷を持ち反発し合いますが、非常に高い温度と圧力のもとではその壁を越え、強い核力で結びつきます。できた原子核の質量はもとの2つの合計よりわずかに軽く、その差がアインシュタインのE=mc²に従ってエネルギーに変わります。1920年にアーサー・エディントンが太陽のエネルギー源として水素の融合を提案し、1939年にハンス・ベーテが恒星内の融合反応の経路を計算してのちにノーベル賞を受けました。太陽の中心は約1500万℃ですが、巨大な重力の圧力のおかげで融合が起こります。鉄より重い元素は主に超新星爆発や中性子星の合体で作られます。
地上で星をつくる
地上には太陽のような重力がないため、温度を1億℃以上にしなければなりません。この高温プラズマを閉じ込める方法は大きく2つです。1950年代にソ連が開発したドーナツ形の「トカマク」は強い磁場でプラズマを浮かせて閉じ込め、米国の国立点火施設(NIF)は192本のレーザーで燃料ペレットを瞬時に圧縮する「慣性閉じ込め」方式です。2022年12月、NIFはレーザーで投入した2.05MJを上回る3.15MJを得て初めて「点火」に成功しました。韓国の超伝導トカマクKSTARは2024年に1億℃のプラズマを48秒間維持し、日本の那珂市では日欧共同のJT-60SAが2023年に運転を始めました。
核融合発電の課題
燃料の重水素は海水から得られ、反応で二酸化炭素を出さず、核分裂の原子力発電と違って連鎖反応の暴走がなく高レベル廃棄物も少ないため、カーボンニュートラル時代の「夢のエネルギー」と呼ばれます。しかしNIFの点火もレーザー装置全体の消費電力にはまだ遠く、中性子に耐える材料や希少な三重水素の自給などの課題が残ります。日本・EU・米国・中国・韓国など7極がフランスに建設中の国際熱核融合実験炉ITERは、2024年に計画を見直し、2034年運転開始、2039年に本格的な重水素・三重水素実験を目指しています。民間スタートアップも2030年代の実証炉を掲げています。
よくある質問
- 核融合と核分裂(原子力発電)の違いは?
- 核分裂はウランのような重い原子核が割れてエネルギーを出し、核融合は軽い原子核が合体してエネルギーを出します。核融合は連鎖反応の暴走がなく、長寿命の放射性廃棄物もずっと少ないです。
- 核融合発電はいつ実用化されますか?
- 見通しは分かれますが、公的なロードマップはおおむね2050年ごろの電力供給を目標にしています。2030年代を掲げる民間企業もありますが、さらなる実証が必要です。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
- Bethe, H. A. (1939). Energy production in stars. Physical Review, 55(5), 434–456.
- Abu-Shawareb, H., et al. (Indirect Drive ICF Collaboration) (2024). Achievement of target gain larger than unity in an inertial fusion experiment. Physical Review Letters, 132, 065102.
- ITER Organization (2024). ITER Research Plan and baseline update. iter.org.
