「第4の状態」の発見
1879年、イギリスのウィリアム・クルックスは真空管の中で放電する気体がふつうの気体と違う性質を示すことから、これを「放射物質」、物質の第4の状態と呼びました。1928年、アメリカのアーヴィング・ラングミュアは、電離した気体が血液の血漿のように荷電粒子を運び集団で振動する様子を見て「プラズマ」と名づけました。1920年、インドのメグナード・サハは温度と圧力によって気体がどれだけ電離するかを計算する式を立て、恒星のスペクトルを読み解く道を開きました。1923年にデバイとヒュッケルが示した「デバイ遮へい」は、プラズマが電荷を覆い隠して全体として中性を保つ仕組みを説明します。
宇宙と地球のプラズマ
太陽や恒星、星間ガスなど、宇宙の見える物質の99%以上がプラズマです。ノルウェーのクリスチャン・ビルケランは1900年代初めの探検と実験から、オーロラは太陽から来た荷電粒子が地球の磁場に沿って極域に降り注いで生じると主張し、のちに人工衛星の観測で確かめられました。1942年、ハンネス・アルヴェーンはプラズマと磁場が一緒に揺れる「アルヴェーン波」を予言して1970年にノーベル賞を受け、1958年にはユージン・パーカーが太陽からプラズマが絶えず流れ出す「太陽風」を予言しました。2018年に打ち上げられたパーカー・ソーラー・プローブはこの太陽風の中に入り、太陽系を満たすプラズマを直接測っています。地球では雷、炎の一部、電離層がプラズマです。
技術の中のプラズマと核融合
蛍光灯、ネオンサイン、プラズマ切断機、そして半導体チップの微細な回路を削るエッチングや薄膜を作る成膜の工程は、すべてプラズマを利用しています。最大の目標は核融合発電です。1950年代にソ連のタムとサハロフが考案したドーナツ形の磁場の容器「トカマク」が代表的で、1957年にジョン・ローソンは核融合でエネルギーを得るための密度・温度・閉じ込め時間の条件を示しました。日本のJT-60SAや韓国のKSTARが高温プラズマの記録に挑み、フランスでは国際共同装置ITERが建設中です。2022年、アメリカの国立点火施設(NIF)はレーザーで燃料ペレットを圧縮し、標的に注いだレーザーのエネルギーを上回る核融合エネルギーを初めて得ました。ただし施設全体の消費電力まで上回る商用発電はまだ遠い課題です。核分裂と違い、長寿命の高レベル廃棄物が少ないことが期待されています。
よくある質問
- プラズマと気体は何が違うの?
- 気体は中性の原子や分子でできていますが、プラズマでは電荷を持つイオンと電子が自由に動くため電気をよく通し、磁場に強く反応し、自ら光を出すこともあります。
- 血液の「血漿」と同じ言葉?
- 英語ではどちらもplasmaです。ラングミュアが血漿から名前を借りましたが、物理学のプラズマと血液の血漿はまったく別のものです。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
- Birkeland, K. (1908). The Norwegian Aurora Polaris Expedition 1902–1903 (Vol. 1). Christiania: H. Aschehoug.
- Saha, M. N. (1920). Ionization in the solar chromosphere. Philosophical Magazine, 40(238), 472–488.
- Debye, P., & Hückel, E. (1923). Zur Theorie der Elektrolyte. Physikalische Zeitschrift, 24, 185–206.
- Langmuir, I. (1928). Oscillations in ionized gases. PNAS, 14(8), 627–637.
- Alfvén, H. (1942). Existence of electromagnetic-hydrodynamic waves. Nature, 150(3805), 405–406.
- Lawson, J. D. (1957). Some criteria for a power producing thermonuclear reactor. Proceedings of the Physical Society B, 70(1), 6–10.
- Parker, E. N. (1958). Dynamics of the interplanetary gas and magnetic fields. Astrophysical Journal, 128, 664–676.
- Chen, F. F. (2016). Introduction to Plasma Physics and Controlled Fusion (3rd ed.). Cham: Springer.
- Abu-Shawareb, H., et al. (Indirect Drive ICF Collaboration). (2024). Achievement of target gain larger than unity in an inertial fusion experiment. Physical Review Letters, 132(6), 065102.
