ステレオタイプ脅威とは
ステレオタイプ脅威とは、「自分の属する集団はこれが苦手だ」という否定的なステレオタイプを意識する場面で、それを自分が証明してしまうのではないかと緊張し、本来の力より低い成績になってしまう現象です。ステレオタイプを信じていない人にも起こりうる点が重要です。
- 最初の研究
- スティールとアロンソン(1995)
- 代表例
- 黒人学生の言語テスト、女性の数学テスト
- しくみ
- 不安、自己監視、ワーキングメモリへの負荷
- 論点
- 効果の大きさと再現性
代表的な実験
スティールとアロンソン(1995)は、アメリカの大学生に難しい言語問題を解かせました。テストを「知的能力を診断する検査」と説明すると黒人学生の得点が白人学生より低くなりましたが、「能力とは関係のない問題解決の練習」と説明すると差はほぼなくなりました。スペンサーら(1999)も、数学の力が同程度の男女に難しい問題を解かせ、「男女差が出るテストだ」と伝えたときだけ女性の得点が下がることを示しました。日本でも「女子は理系が苦手」というイメージが進路選択に影響しているのではないかと議論されています。
なぜ起こるのか
| 要因 | 説明 |
|---|---|
| 不安と緊張 | 「失敗してはいけない」という圧力でストレスが高まる |
| 自己監視 | 問題よりも自分のミスを見張ることに注意が向く |
| ワーキングメモリの負荷 | 心配が頭の中の作業スペースを奪い、問題を解く余裕が減る |
テスト用紙の最初の質問ひとつで、得点が変わることがあります。テストの前に性別などを記入させるだけで、その集団へのステレオタイプが思い浮かび、成績に影響したという研究もあります。
再現性をめぐる議論
その後数百の研究が行われましたが、結果は一貫していません。フロアとウィヒャーツ(2015)による女子の数学・理科のメタ分析では、平均的な効果は小さく、出版バイアスによって効果が大きく見えていた可能性が指摘されました。現在では、ステレオタイプ脅威を「いつも大きく働く法則」ではなく、条件によって生じるリスク要因としてとらえる見方が多くなっています。
教室で脅威を減らすには
- テストの意味を伝え直す。「能力の判定」ではなく「学んだことを確かめ、伸ばすための機会」と説明します。
- 属性の記入はテストの後に。性別などを直前に意識させないようにします。
- ロールモデルを示す。女性研究者やさまざまな背景をもつ先輩の例が励みになります。
- 能力は伸びると伝える。成長マインドセットのメッセージと自己効力感を高めるフィードバックを組み合わせます。
期待が成績を変える別の例はピグマリオン効果で紹介しています。
よくある質問
- ステレオタイプ脅威とは何ですか?
- 自分の集団への否定的なステレオタイプを意識したとき、それを裏づけてしまう不安から成績が下がる現象です。
- 代表的な実験は何ですか?
- スティールとアロンソン(1995)の実験で、テストを知能検査と説明したときだけ黒人学生の得点が下がりました。
- ステレオタイプ脅威は確かな効果ですか?
- 多くの研究がありますが、効果は小さく出版バイアスの可能性も指摘されているため、条件によって生じるリスク要因と考えるのが適切です。
参考文献
- Steele, C. M., & Aronson, J. (1995). Stereotype threat and the intellectual test performance of African Americans. Journal of Personality and Social Psychology, 69(5), 797–811.
- Spencer, S. J., Steele, C. M., & Quinn, D. M. (1999). Stereotype threat and women’s math performance. Journal of Experimental Social Psychology, 35(1), 4–28.
- Flore, P. C., & Wicherts, J. M. (2015). Does stereotype threat influence performance of girls in stereotyped domains? A meta-analysis. Journal of School Psychology, 53(1), 25–44.
