単位根検定とは
単位根検定(unit root test)とは、時系列が定常か、それとも単位根をもつ非定常な系列かを判定する検定です。定常な系列は平均や分散が時間を通じて一定で、ショックが起きても平均に戻っていきますが、単位根をもつ系列ではショックの影響が消えずに積み重なります。代表例がランダムウォーク yₜ = yₜ₋₁ + εₜ で、自己回帰係数が1であることから「単位根」と呼ばれます。
📌 ひと目でわかる
- 目的
- 定常性の判定
- 代表的な検定
- ADF、PP、KPSS
- 単位根があれば
- 差分をとって分析
- 関連
- 共和分、ARIMA
なぜ重要なのか
単位根をもつ変数どうしをそのまま回帰すると、実際には無関係でも決定係数やt値が高く出る見せかけの回帰(spurious regression)が起こりえます。ネルソンとプロッサー(1982年)は、アメリカの主要なマクロ経済時系列の多くが単位根をもつと報告し、大きな反響を呼びました。そのため時系列分析は、まず単位根検定から始めるのが基本です。
おもな検定の比較
| 検定 | 帰無仮説 | 特徴 |
|---|---|---|
| ADF(拡張ディッキー・フラー) | 単位根あり | ラグ付き差分項で自己相関に対処。もっとも広く使われる |
| PP(フィリップス・ペロン) | 単位根あり | 自己相関や不均一分散をノンパラメトリックに補正 |
| KPSS | 定常(単位根なし) | 帰無仮説が逆なので、ADFとあわせた確認に使う |
手順と結果の読み方
- グラフを見て、定数項のみか定数項とトレンド項を入れるかを決めます。
- ADFではAICやBICなどの情報量規準でラグ次数を選びます。
- ADF統計量が臨界値より小さければ(より負であれば)帰無仮説を棄却し、定常と判断します。通常のt分布ではなくディッキー・フラー分布の臨界値を使う点に注意しましょう。
- 単位根があれば1階差分をとって再び検定します。1回の差分で定常になる系列をI(1)(1次の和分過程)と呼びます。
- I(1)の変数どうしに長期的な均衡関係があるかは、共和分検定で調べます。
ADFとKPSSを両方試すと、結論が食いちがうことがあります。ADFで単位根を棄却できず、KPSSでも定常性を棄却できないなら、「データからは判断しきれない」というサインです。構造変化が疑われる場合は、構造変化を考慮した単位根検定を検討しましょう。
よくある質問
- ADF検定のp値が0.05未満なら?
- 単位根ありという帰無仮説を棄却し、定常と判断します。
- PythonやRではどうやりますか?
- Pythonはstatsmodelsのadfuller・kpss関数、Rはurcaやtseriesパッケージがよく使われます。
参考文献
- Dickey, D. A., & Fuller, W. A. (1979). Distribution of the estimators for autoregressive time series with a unit root. Journal of the American Statistical Association, 74(366), 427–431.
- Said, S. E., & Dickey, D. A. (1984). Testing for unit roots in autoregressive-moving average models of unknown order. Biometrika, 71(3), 599–607.
- Phillips, P. C. B., & Perron, P. (1988). Testing for a unit root in time series regression. Biometrika, 75(2), 335–346.
- Kwiatkowski, D., Phillips, P. C. B., Schmidt, P., & Shin, Y. (1992). Testing the null hypothesis of stationarity against the alternative of a unit root. Journal of Econometrics, 54(1–3), 159–178.
- Nelson, C. R., & Plosser, C. I. (1982). Trends and random walks in macroeconomic time series. Journal of Monetary Economics, 10(2), 139–162.
