GARCHモデルとは
GARCHモデル(一般化自己回帰条件付き分散不均一モデル)とは、時系列の変動の大きさ(分散)が時間とともに変わり、それが過去のショックと過去の変動の大きさで決まると考えるモデルです。ロバート・エングルが1982年にイギリスのインフレ率の分析でARCHモデルを示し、教え子のティム・ボラースレフが1986年に過去の分散も含める形に一般化しました。エングルはこの業績で2003年にノーベル経済学賞を受賞しています。
- 問題
- ボラティリティ・クラスタリング
- ARCH
- 過去のショックの2乗で分散を説明
- GARCH
- 過去のショック+過去の分散で説明
- 定番
- GARCH(1,1)
ボラティリティ・クラスタリング
株価の日次収益率をグラフにすると、落ち着いた時期と荒れた時期がかたまって現れます。これをボラティリティ・クラスタリングといいます。平均を予測するARIMAモデルは分散が一定だと仮定するため、この特徴をとらえられません。
GARCH(1,1)の直感
今日の分散 = 長期的な水準 + α×(昨日のショック)² + β×(昨日の分散)
αは新しいニュースへの反応の強さ、βは変動がどれだけ長く続くかを表します。株価データではα+βが1に近く、ショックがなかなか消えないことが多いです。
リーマン・ショックのとき、市場はなぜ何日も大きくゆれ続けたのでしょうか。一度大きなショックが起きると投資家の不安が続き、変動の大きい状態が長引くからです。GARCHはこの「ゆれがゆれを呼ぶ」現象を数字でとらえます。
使われる場面
- リスク管理:VaR(最大予想損失額)の計算
- デリバティブ:オプション価格に必要なボラティリティの予測
- ポートフォリオ:時期ごとのリスク調整
- 為替や商品価格の変動分析
限界
基本形は良いニュースと悪いニュースの影響を同じに扱います。実際には下落のショックのほうが変動を大きくしやすいため、EGARCHやGJR-GARCHなどの非対称モデルが生まれました。価格がそもそも予測できるかという問いは効率的市場仮説とかかわります。
よくある質問
- ARCHとGARCHのちがいは?
- ARCHは過去のショックだけで分散を説明し、GARCHは過去の分散も入れることで、少ないパラメータで長く続く変動を表せます。
- なぜGARCH(1,1)がよく使われるのですか?
- パラメータが少ないのに、多くの金融データをよく説明できるからです。
- 株価の上がり下がりも予測できますか?
- いいえ。GARCHが予測するのは主に変動(リスク)の大きさです。
参考文献
- Engle, R. F. (1982). Autoregressive conditional heteroscedasticity with estimates of the variance of United Kingdom inflation. Econometrica, 50(4), 987–1007.
- Bollerslev, T. (1986). Generalized autoregressive conditional heteroskedasticity. Journal of Econometrics, 31(3), 307–327.
