概念
ウィンドウ効果(窓口効果)とは、一つの文化商品が最初に公開された窓口(ウィンドウ)で終わらず、別の流通窓口へと移りながら付加価値を生み続ける現象です。映画なら、劇場公開から数か月後にIPTV・VODへ、さらに有料映画チャンネルや配信サービスへ、最後に地上波や無料チャンネルへと続くのが典型的な順序です。このように窓口を時間順に並べる戦略をウィンドウイングといいます。
なぜ文化産業で目立つのか
- 高い初期費用、低い複製費用:制作費の大半は最初に一度かかる固定費で、追加の窓口に供給する費用はごく小さいため、窓口が増えるほど平均費用が下がる規模の経済が働きます。
- 非競合性:一人が視聴しても他の人の視聴は減らないため、同じコンテンツを複数の市場で販売できます。
- 文化的割引:海外市場では言語や文化の違いで価値が下がりますが、追加費用が小さいため輸出だけでも利益が残ります。
ホールドバックと価格差別
窓口と窓口の間に置く待機期間をホールドバックといいます。オーウェンとワイルドマン(1992)はウィンドウイングを異時点間の価格差別として説明しました。早く見たい消費者は高い劇場料金を払い、待てる消費者は後から安いVODや無料放送で見ます。支払意思額に応じて消費者を分け、各窓口で最大の収益をあげる仕組みです。ウォーターマン(2005)は、ハリウッドが1950年代のテレビの脅威の後、有料放送とホームビデオの窓口を活用して収益を大きく伸ばしたと分析しました。ホールドバックが短すぎると前の窓口の売上を食う共食い(カニバリゼーション)が起き、長すぎると海賊版や関心の低下で後の窓口の価値が下がります。
OSMUと韓流
ウィンドウ効果が同じ形のコンテンツを複数のメディアに移すものだとすれば、OSMU(ワンソース・マルチユース)はウェブトゥーン原作をドラマ・映画・ゲーム・キャラクター商品に展開するように、原作を別のジャンルや商品へ広げる戦略です。両者は一緒に使われることが多くあります。韓国ドラマが国内放送の後に海外の放送局や配信サービスに販売され、観光・化粧品・食品の需要まで押し上げた韓流は、ウィンドウ効果と産業間波及効果の代表例とされます。
配信時代の変化
Netflixのようなグローバル配信サービスの登場で劇場のホールドバックは大きく短縮され、劇場と配信の同時公開も増えました。特にコロナ禍で同時公開が広がり、劇場業界との摩擦を生みました。また配信事業者が制作費を出して全世界の権利を一括で取得する方式が増え、制作会社が窓口ごとに得ていた収益が減ったという指摘もあります。一方でプラットフォームを通じて多くの国に同時公開されるようになり、海外の窓口に届く速度ははるかに速くなりました。
参考文献
- Owen, B. M., & Wildman, S. S. (1992). Video Economics. Cambridge, MA: Harvard University Press.
- Waterman, D. (2005). Hollywood's Road to Riches. Cambridge, MA: Harvard University Press.