ARIMAモデルとは
ARIMAモデル(自己回帰和分移動平均モデル)とは、時系列の現在の値を、その系列自身の過去の値と過去の予測誤差で説明するモデルです。トレンドがあって平均が動いていく系列は、まず差分をとって安定させてから分析します。統計学者のジョージ・ボックスとグウィリム・ジェンキンスが1970年の著書でモデルの選び方から検証までの手順を体系化したため、ボックス=ジェンキンス法とも呼ばれます。
- AR(p)
- 過去p期の値で説明
- I(d)
- d回差分をとって定常化
- MA(q)
- 過去q期の誤差で説明
- 表記
- ARIMA(p, d, q)
定常性と差分
ARIMAは、平均や分散が時間とともに変わらない定常な時系列を前提とします。GDPのようにトレンドがある系列は前期との差(1階差分)をとり、それでも不十分なら2階差分をとります。差分が必要かどうかは単位根検定、代表的にはディッキーとフラー(1979)にもとづくADF検定で確かめます。
ボックス=ジェンキンス法の手順
- 同定:コレログラム(ACF・PACF)からp、d、qの候補を決める。
- 推定:係数を推定し、AICやBICでモデルを比べる。
- 診断:残差がホワイトノイズかをリュン=ボックス検定(1978)で確かめる。
- 予測:診断を通ったモデルで将来を予測する。
| モデル | ACF | PACF |
|---|---|---|
| AR(p) | 徐々に減衰 | p期で切断 |
| MA(q) | q期で切断 | 徐々に減衰 |
| ARMA | 徐々に減衰 | 徐々に減衰 |
明日の電力需要や来月の売上は、どうやって予測しているのでしょうか。いちばん素直な考え方は「過去のパターンが続く」という仮定です。ARIMAはこの直感を数式にしたものです。毎年夏に同じ動きがくり返されるなら、季節差分を加えた季節ARIMA(SARIMA)を使います。
限界
線形の関係しか扱えず、構造変化や突然のショックには弱いモデルです。株式の収益率のように変動の大きい時期がかたまって現れる場合は、分散をモデル化するGARCHモデルを組み合わせます。株価は過去の情報では予測しにくいという考え方は効率的市場仮説につながります。
よくある質問
- ARIMA(1,1,1)とはどういう意味ですか?
- 1回差分をとった系列を、1期前の値と1期前の誤差で説明するという意味です。
- 差分は何回とればよいですか?
- ふつうは1回、多くても2回です。単位根検定とグラフで判断します。
- ARMAとのちがいは?
- ARMAは定常な系列に使い、ARIMAは差分の段階を加えて非定常な系列も扱えるようにしたものです。
参考文献
- Box, G. E. P., & Jenkins, G. M. (1970). Time series analysis: Forecasting and control. Holden-Day.
- Dickey, D. A., & Fuller, W. A. (1979). Distribution of the estimators for autoregressive time series with a unit root. Journal of the American Statistical Association, 74(366), 427–431.
- Ljung, G. M., & Box, G. E. P. (1978). On a measure of lack of fit in time series models. Biometrika, 65(2), 297–303.
