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脅威均衡論

🏛️ 政治・行政学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
脅威均衡論とは、米国の国際政治学者スティーヴン・ウォルトが1985年の論文と1987年の著書『同盟の起源』で示した理論で、国家は力の大きさそのものよりも、総合的国力、地理的近接性、攻撃能力、攻撃意図によって判断される「脅威」に対応して同盟を形成すると説明します。ネオリアリズムの勢力均衡論を修正した代表的な理論です。
目次
  1. 1. 勢力均衡から脅威均衡へ
  2. 2. 脅威の4要素とバランシング・バンドワゴニング
  3. 3. 批判とその後の論争
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

勢力均衡から脅威均衡へ

ウォルツ(1979年)のネオリアリズムの勢力均衡論は、国家は体系内で最も力の大きい国家に対抗して均衡をとると考えました。しかしウォルト(1985年、1987年)は、冷戦期に米国がソ連より国力が大きかったにもかかわらず、欧州やアジアの多くの国が米国側についたことを指摘しました。彼は、国家が均衡をとる対象は力そのものではなく脅威であるとし、1955〜1979年の中東諸国の同盟事例を分析してこの主張を検討しました。その結果、中東諸国はおおむね最も強い国家よりも最も脅威的と認識した国家に対抗して同盟を結んだと報告しました。

脅威の4要素とバランシング・バンドワゴニング

ウォルトは脅威を4つの要素に分けました。人口・経済・軍事力を合わせた総合的国力、近いほど脅威が大きくなる地理的近接性、他国の主権を脅かしうる攻撃能力、そして相手が攻撃的だと認識される攻撃意図です。彼は、脅威国家に対抗して他国と手を組むバランシングが、脅威国家に追随するバンドワゴニングよりはるかに一般的であり、バンドワゴニングは主に弱小国や同盟相手を得られない国家に見られると考えました。イデオロギーの類似性や援助、浸透といった要因は、同盟形成に比較的弱い影響しか与えないと結論づけました。

批判とその後の論争

シュウェラー(1994年)は、現状変更を望む国家は利益のためにバンドワゴニングするとして、この理論が現状維持国家中心だと批判しました。クリステンセンとスナイダー(1990年)は多極体系での同盟の過度な連鎖や責任転嫁の問題を指摘し、レヴィとバーネット(1991年)は国内政治上の生存が同盟選択を左右すると論じました。ヴァスケス(1997年)は、脅威概念の追加をリアリズムの退行的修正と評価しました。冷戦後には米国の単極体制への対応をめぐり、ペイプ(2005年)とウォルト(2005年)が「ソフト・バランシング」を主張し、ブルックスとウォルフォース(2005年)がこれに反論しました。

よくある質問

脅威均衡論を簡単に言うと?
国々は単に最も強い国ではなく、近くにあって攻撃する能力と意図がありそうな国を警戒し、他国と手を組むという理論です。
勢力均衡論とは何が違いますか?
勢力均衡論は力の大きさに注目しますが、脅威均衡論は力に加えて地理的近接性、攻撃能力、攻撃意図を合わせて考慮し、国家が何に対抗して同盟を結ぶのかを説明します。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Walt, S. M. (1985). Alliance formation and the balance of world power. International Security, 9(4), 3–43.
  2. Walt, S. M. (1987). The Origins of Alliances. Ithaca: Cornell University Press.
  3. Waltz, K. N. (1979). Theory of International Politics. Reading, MA: Addison-Wesley.
  4. Morgenthau, H. J. (1948). Politics Among Nations: The Struggle for Power and Peace. New York: Knopf.
  5. Schweller, R. L. (1994). Bandwagoning for profit: Bringing the revisionist state back in. International Security, 19(1), 72–107.
  6. Christensen, T. J., & Snyder, J. (1990). Chain gangs and passed bucks: Predicting alliance patterns in multipolarity. International Organization, 44(2), 137–168.
  7. Levy, J. S., & Barnett, M. N. (1991). Domestic sources of alliances and alignments: The case of Egypt, 1962–73. International Organization, 45(3), 369–395.
  8. Vasquez, J. A. (1997). The realist paradigm and degenerative versus progressive research programs. American Political Science Review, 91(4), 899–912.
  9. Walt, S. M. (2005). Taming American Power: The Global Response to U.S. Primacy. New York: W. W. Norton.
  10. Pape, R. A. (2005). Soft balancing against the United States. International Security, 30(1), 7–45.
  11. Brooks, S. G., & Wohlforth, W. C. (2005). Hard times for soft balancing. International Security, 30(1), 72–108.
  12. Snyder, G. H. (1997). Alliance Politics. Ithaca: Cornell University Press.
  13. Kaufman, S. J., Little, R., & Wohlforth, W. C. (Eds.). (2007). The Balance of Power in World History. Basingstoke: Palgrave Macmillan.

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この記事は2026年10月27日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。