概念と古典的な実験
ミールとローゼン(1955年)は、心理検査の効率を評価する際、見つけようとする特性がまれであれば、検査結果だけによる判断は大きく外れうるとすでに警告していました。カーネマンとトヴェルスキー(1973年)は、参加者に、エンジニア70人と弁護士30人(またはその逆)のなかから無作為に選ばれた1人の人物描写を示し、その人がエンジニアである確率を尋ねました。参加者は集団の構成比が変わってもほとんど同じ確率を答え、描写がエンジニアの典型にどれだけ当てはまるかだけを見て判断していたのです。これは、代表性ヒューリスティックによる判断が基準率を押しのけるという解釈につながりました。ニスベットとボルギダ(1975年)も、人々が統計的な合意の情報よりも個別の事例をはるかに重視するという結果を報告しています。
タクシー問題とベイズ的な構造
トヴェルスキーとカーネマン(1982年)が取り上げたタクシー問題では、町のタクシーの85%が緑色、15%が青色で、正答率80%の目撃者が、事故を起こしたのは青いタクシーだったと証言します。多くの人は事故車が青である確率を80%と答えますが、ベイズの定理で計算すると約41%にすぎません。バー=ヒレル(1980年)は、基準率が個別の事例と因果的に関係しているように見えたり、事例により直接関わるものと感じられたりする場合には無視されにくいことを示し、アイゼン(1977年)も、因果的な基準率のほうが判断に反映されやすいと報告しています。カッセルズ、シェーンバーガー、グレイボーイズ(1978年)やエディ(1982年)は、まれな疾患の検査で陽性となった結果を解釈する際に専門家も同様の誤りを犯す事例を示し、この誤りが一般の人だけの問題ではないことを明らかにしました。
頻度形式をめぐる論争と理論的な論点
ギーゲレンツァーとホフラーゲ(1995年)は、同じ問題を確率ではなく「1000人中何人」のような自然頻度で示すと正答率が大きく上がることを示し、コスミデスとトゥービー(1996年)は、人間の心は頻度の情報を処理するように進化したという生態学的合理性の観点を提示しました。ケーラー(1996年)は、実験で与えられる基準率が現実の判断において常に規範的に適切とは限らないとして、基準率の無視は誇張されてきた可能性があると批判的に再検討しました。バービーとスローマン(2007年)は、頻度形式の効果は集合どうしの包含関係をはっきり示すことから生じ、二重過程理論でよりよく説明できると主張しています。カーネマン(2011年)は、この誤りを速く直観的なシステム1の特徴として紹介しました。基準率の誤りは、ギャンブラーの誤謬や利用可能性ヒューリスティックとともに、確率についての直観の限界を示す代表的な現象です。
よくある質問
- 基準率の誤りを簡単に言うと?
- ある出来事がそもそもどれくらいありふれているかを忘れて、目の前のもっともらしい情報だけで確率を判断してしまう間違いです。たとえば、非常にまれな出来事を精度の高い証拠が示していると、ほぼ確実だと思い込んでしまうケースです。
- なぜ専門家もこの誤りを犯すのですか?
- 確率で表された情報を頭のなかで組み合わせるのは、直観的には難しいからです。研究によれば、同じ情報を「1000人中何人」のような頻度で示すと、判断はずっと正確になります。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
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