手根管症候群とは?
手根管症候群は、手首の骨と横手根靱帯に囲まれた手根管の中で正中神経が圧迫されて起こる病気です。正中神経は親指・人差し指・中指と薬指の親指側半分の感覚を担っているため、この範囲にしびれやピリピリ感が出ます。スウェーデンの一般住民調査(Atroshi ら, 1999)では、成人の約3.8%が臨床的に手根管症候群と確認されました。
原因と危険因子
- 手の使いすぎ:手首を曲げたままの作業、振動工具の使用
- ホルモン・代謝の要因:妊娠・出産期、更年期、甲状腺機能低下症、糖尿病
- 構造的な要因:手首の骨折、関節リウマチ、腱鞘の腫れ
- 性別・年齢:女性、40〜60代に多い
パソコン作業との関係は研究によって結果が分かれており、キーボード操作だけが原因とは言い切れません。
症状と診断
初期には明け方に手がしびれて目が覚め、手を振ると楽になるのが典型的です。進行するとボタンをかけるなどの細かい動作が難しくなり、親指の付け根の筋肉(母指球)がやせてくることもあります。診察では手首を約1分曲げて症状が出るかをみるファレンテスト(Phalen, 1966)や、手首をたたいて響くかをみるティネル徴候を確認し、神経伝導検査や超音波検査で確定と重症度の判定を行います。
治療
軽症なら、夜間に手首をまっすぐ保つ装具、作業習慣の見直し、ステロイド注射で改善することが多いです。しびれが常に続く場合や母指球がやせてきた場合は、横手根靱帯を切って圧迫を除く手根管開放術を検討します(Padua ら, 2016)。神経の障害が長引くと回復に時間がかかるため、力が入りにくくなったら早めに受診しましょう。
予防と日常の工夫
キーボードやマウスは手首が反らない高さに調整し、30〜60分ごとに手を休めましょう。長時間のスマホ操作は首にも負担がかかり、ストレートネック(スマホ首)やVDT症候群と一緒にみられることもあります。
この記事は一般的な健康情報であり、診断や治療に代わるものではありません。症状が続く場合は医師に相談してください。
よくある質問
- 手がしびれたら手根管症候群ですか?
- そうとは限りません。頸椎の病気、末梢神経障害、糖尿病でもしびれは起こります。小指までしびれる場合は別の神経の問題が考えられます。
- 手術すれば再発しませんか?
- 多くは改善しますが、再発したり感覚が完全には戻らなかったりすることもあります。
出典確認日:2026-10-25
関連項目: ドケルバン病(手首の腱鞘炎)
参考文献
- Phalen, G. S. (1966). The carpal-tunnel syndrome: Seventeen years' experience in diagnosis and treatment of six hundred fifty-four hands. Journal of Bone and Joint Surgery (American Volume), 48(2), 211–228.
- Atroshi, I., Gummesson, C., Johnsson, R., Ornstein, E., Ranstam, J., & Rosén, I. (1999). Prevalence of carpal tunnel syndrome in a general population. JAMA, 282(2), 153–158.
- Padua, L., Coraci, D., Erra, C., Pazzaglia, C., Paolasso, I., Loreti, C., Caliandro, P., & Hobson-Webb, L. D. (2016). Carpal tunnel syndrome: Clinical features, diagnosis, and management. The Lancet Neurology, 15(12), 1273–1284.
