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くもの巣理論

📈 経済学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
くもの巣理論とは、生産者が今年の価格を見て来年の生産量を決めるように、供給が時間差をもって価格に反応するとき、価格と生産量が均衡の上下を交互に行き来する過程を説明する経済モデルです。価格と数量のグラフに描かれる軌跡がくもの巣のように見えることからこの名がつき、モーデカイ・エゼキエル(1938年)が体系的にまとめました。
目次
  1. 1. 起源と基本構造
  2. 2. 収束、発散、循環の条件
  3. 3. 期待形成をめぐる論争と現代的な拡張
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

起源と基本構造

1920年代末、ヨーロッパの経済学者たちは、豚肉のような農産物の価格が数年周期で規則的に上下することに注目しました。ドイツのハナウ(1928年)は豚価格の周期を分析し、シュルツ、リッチ、ティンバーゲン(1930年)は需要曲線と供給曲線でこれを説明しようとしました。カルドア(1934年)が「くもの巣定理」と名づけ、エゼキエル(1938年)がこれを総合した古典的な論文を発表しました。基本モデルでは、農家は今年の価格が来年も続くと考えて生産量を決めます。今年の価格が高ければ来年の生産が増えて価格が下がり、低い価格を見た農家が翌年の生産を減らすと、価格は再び上がります。

収束、発散、循環の条件

エゼキエル(1938年)は、この過程がどう展開するかは需要曲線と供給曲線の傾きによって決まるとまとめました。供給が需要より価格に鈍感であれば振動はしだいに小さくなって均衡に収束し、供給のほうが敏感であれば振動が大きくなって発散し、二つの傾きが等しければ同じ幅で循環し続けます。コースとファウラー(1935年)は英国のベーコン生産と豚周期を実証的に検討し、農家の期待はそれほど単純ではないと指摘しました。フリーマン(1976年)は、工学系卒業者の供給と初任給が数年の時間差をもって循環するという労働市場の事例を示し、このモデルが農業以外にも当てはまることを明らかにしました。

期待形成をめぐる論争と現代的な拡張

くもの巣理論は、経済主体の期待をどのようにモデル化するかという論争の出発点となりました。ナーラブ(1958年)は、過去の予測誤差を少しずつ反映する「適応的期待」を導入し、振動を和らげうることを示しました。ミュース(1961年)はこのモデルを批判的に検討し、合理的な生産者であれば体系的に外れる予測を続けるはずがないとする合理的期待仮説を提唱しました。ローゼン、マーフィー、シャインクマン(1994年)は、牛の周期を合理的期待のもとでの生物学的なタイムラグとして説明しました。一方、キアレラ(1988年)とホームズ(1994年)は、非線形の需要と供給に適応的期待を組み合わせると、規則的な循環を超えてカオス的な動学が現れうることを示しました。このモデルは、ロトカ=ヴォルテラの方程式と同じく、単純な規則から振動が生まれる動学の代表例として扱われています。

よくある質問

くもの巣理論を簡単に説明すると?
今年キャベツが高ければ農家が来年たくさん植えて値崩れし、それを見た農家が翌年は植える量を減らして再び値上がりする、という繰り返しを説明するモデルです。
価格の振動はいつ収まりますか?
供給が需要に比べて価格の変化に鈍感なほど振動は小さくなり、均衡に収束します。逆に供給のほうが敏感だと振動が大きくなることがあります。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Ezekiel, M. (1938). The cobweb theorem. Quarterly Journal of Economics, 52(2), 255–280.
  2. Kaldor, N. (1934). A classificatory note on the determinateness of equilibrium. Review of Economic Studies, 1(2), 122–136.
  3. Schultz, H. (1930). Der Sinn der statistischen Nachfragekurven. Bonn: Kurt Schroeder.
  4. Ricci, U. (1930). Die „synthetische Ökonomie“ von Henry Ludwell Moore. Zeitschrift für Nationalökonomie, 1(5), 649–668.
  5. Tinbergen, J. (1930). Bestimmung und Deutung von Angebotskurven. Zeitschrift für Nationalökonomie, 1(5), 669–679.
  6. Hanau, A. (1928). Die Prognose der Schweinepreise. Vierteljahrshefte zur Konjunkturforschung, Sonderheft 7. Berlin.
  7. Nerlove, M. (1958). Adaptive expectations and cobweb phenomena. Quarterly Journal of Economics, 72(2), 227–240.
  8. Muth, J. F. (1961). Rational expectations and the theory of price movements. Econometrica, 29(3), 315–335.
  9. Coase, R. H., & Fowler, R. F. (1935). Bacon production and the pig-cycle in Great Britain. Economica, 2(6), 142–167.
  10. Rosen, S., Murphy, K. M., & Scheinkman, J. A. (1994). Cattle cycles. Journal of Political Economy, 102(3), 468–492.
  11. Chiarella, C. (1988). The cobweb model: Its instability and the onset of chaos. Economic Modelling, 5(4), 377–384.
  12. Hommes, C. H. (1994). Dynamics of the cobweb model with adaptive expectations and nonlinear supply and demand. Journal of Economic Behavior & Organization, 24(3), 315–335.
  13. Freeman, R. B. (1976). A cobweb model of the supply and starting salary of new engineers. Industrial and Labor Relations Review, 29(2), 236–248.

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この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。