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Jカーブ効果

📈 経済学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
Jカーブ効果とは、自国通貨の価値が下がった直後には貿易収支がかえって悪化し、一定の時間がたつと改善していくため、時間に沿った貿易収支のグラフがアルファベットのJに似た形を描く現象です。短期には輸出入の数量が価格の変化に遅れて反応するために生じると説明されます。
目次
  1. 1. 概念と発生の原因
  2. 2. 1980年代の米国の事例とヒステリシス
  3. 3. 実証論争と評価
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

概念と発生の原因

マーシャル=ラーナー条件は、輸出入の需要が十分に弾力的であれば平価切り下げが貿易収支を改善すると述べています。ところが、この弾力性は時間がたつほど大きくなる傾向があります。スティーブン・マギー(1973年)は、切り下げ前に結ばれた輸出入契約が従来の価格と通貨で履行される「通貨契約期間」、価格が新しい為替レートに合わせて変わる「パススルー期間」、数量が本格的に調整される段階を区別しました。はじめは輸入数量が変わらないまま自国通貨建ての輸入代金が増えて貿易収支が悪化し、やがて消費者や企業が取引先や購入を切り替えると、輸出が増え輸入が減って貿易収支が改善します。ユンツとロンベルク(1973年)は、こうした調整に数年かかりうると推計しました。

1980年代の米国の事例とヒステリシス

1985年以降にドルが大きく下落したにもかかわらず米国の貿易赤字がしばらく縮小しなかったことで、Jカーブは大きな注目を集めました。クルーグマンとボールドウィン(1987年)は赤字が続いた原因を分析し、クルーグマン(1991年)は最終的には調整が進んだと評価しました。ボールドウィン(1988年)とディキシット(1989年)は、外国企業が市場に参入するには固定費用がかかるため、一時的な為替変動が元に戻った後も輸入の構造が元に戻らない「ヒステリシス」が生じうることを示しました。ゴールドバーグとネッター(1997年)は、輸出企業が市場ごとに異なる価格を設定し、為替変動の一部しか価格に反映させない現象を整理しました。

実証論争と評価

Jカーブの実証的な裏づけはまちまちです。バーマニ=オスクーイ(1985年)はいくつかの途上国でJカーブのパターンを確認しましたが、ローズとイエレン(1989年)は米国のデータで明確なJカーブを見いだせませんでした。バッカス、キーホー、キッドランド(1994年)は、貿易収支と交易条件の相関がラグとリードにわたって非対称な「Sカーブ」を描くことを示しました。バーマニ=オスクーイとブルックス(1999年)は集計バイアスを減らすために二国間データを用い、バーマニ=オスクーイとラタ(2004年)の文献レビューは、結果が国、期間、手法によって大きく異なると結論づけました。バースタインとゴピナート(2014年)は、ドルのような基軸通貨で貿易価格を建てる慣行がパススルーを左右することを強調しています。このテーマはオーバーシューティング・モデルのような為替調整の動学を扱う理論とあわせて研究されています。

よくある質問

Jカーブ効果を簡単に説明すると?
通貨が下がると、はじめは輸入代金が増えて貿易収支が悪化しますが、時間がたつにつれて輸出が増え輸入が減り、収支が改善する現象です。
Jカーブはいつも現れるのですか?
いいえ。実証結果は国、期間、分析手法によって大きく異なり、はっきりしたJカーブが観察されない場合も多くあります。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Magee, S. P. (1973). Currency contracts, pass-through, and devaluation. Brookings Papers on Economic Activity, 1973(1), 303–325.
  2. Junz, H. B., & Rhomberg, R. R. (1973). Price competitiveness in export trade among industrial countries. American Economic Review, 63(2), 412–418.
  3. Krugman, P. R. (1991). Has the Adjustment Process Worked? Washington, DC: Institute for International Economics.
  4. Krugman, P. R., & Baldwin, R. E. (1987). The persistence of the U.S. trade deficit. Brookings Papers on Economic Activity, 1987(1), 1–55.
  5. Bahmani-Oskooee, M. (1985). Devaluation and the J-curve: Some evidence from LDCs. Review of Economics and Statistics, 67(3), 500–504.
  6. Rose, A. K., & Yellen, J. L. (1989). Is there a J-curve? Journal of Monetary Economics, 24(1), 53–68.
  7. Backus, D. K., Kehoe, P. J., & Kydland, F. E. (1994). Dynamics of the trade balance and the terms of trade: The J-curve? American Economic Review, 84(1), 84–103.
  8. Baldwin, R. (1988). Hysteresis in import prices: The beachhead effect. American Economic Review, 78(4), 773–785.
  9. Dixit, A. (1989). Hysteresis, import penetration, and exchange rate pass-through. Quarterly Journal of Economics, 104(2), 205–228.
  10. Bahmani-Oskooee, M., & Brooks, T. J. (1999). Bilateral J-curve between US and her trading partners. Weltwirtschaftliches Archiv, 135(1), 156–165.
  11. Bahmani-Oskooee, M., & Ratha, A. (2004). The J-curve: A literature review. Applied Economics, 36(13), 1377–1398.
  12. Goldberg, P. K., & Knetter, M. M. (1997). Goods prices and exchange rates: What have we learned? Journal of Economic Literature, 35(3), 1243–1272.
  13. Burstein, A., & Gopinath, G. (2014). International prices and exchange rates. In Handbook of International Economics (Vol. 4, pp. 391–451). Amsterdam: Elsevier.

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この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。