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マーシャル=ラーナー条件

📈 経済学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
マーシャル=ラーナー条件とは、貿易収支が均衡した状態から出発するとき、自国通貨の実質的な減価が貿易収支を改善するためには、輸出需要と輸入需要の価格弾力性(絶対値)の和が1を上回らなければならないという条件です。アルフレッド・マーシャルとアバ・ラーナーにちなんで名づけられ、国際収支論の「弾力性アプローチ」を代表する結論です。
目次
  1. 1. 起源と弾力性アプローチ
  2. 2. 一般化と理論的批判
  3. 3. 実証研究とJカーブ
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

起源と弾力性アプローチ

通貨の価値が下がると、輸出品は海外で安くなり、輸入品は国内で高くなります。しかし同じ量を輸入するのにより多くの自国通貨を支払うことになるため、数量が十分に反応しなければ貿易収支はかえって悪化しかねません。アルフレッド・マーシャル(1923年)は国際貿易における需要の反応を分析し、アバ・ラーナー(1944年)は為替レートの変化と貿易収支の関係を簡潔に定式化しました。この条件によれば、貿易収支が均衡から出発する場合、二つの需要弾力性の和が1を超えるときにのみ平価切り下げは貿易収支を改善します。こうした分析は国際収支論の「弾力性アプローチ」と呼ばれます。

一般化と理論的批判

ビッカーダイク(1920年)、ジョーン・ロビンソン(1937年)、メッツラー(1948年)は、供給弾力性が無限大でない場合も含むより一般的な条件を導き、これは「ビッカーダイク=ロビンソン=メッツラー条件」と呼ばれます。マーシャル=ラーナー条件はその特殊ケースにあたります。ハーバーガー(1950年)は切り下げが所得に及ぼす効果をあわせて考察し、アレクサンダー(1952年)は貿易収支が国民所得と国内支出(アブソープション)の差に等しいという恒等式に着目した「アブソープション・アプローチ」を提示して、弾力性だけでは結果を説明できないと批判しました。その後、ドーンブッシュ(1975年)などの研究は、貨幣市場や資産市場も含める方向へ議論を広げました。この流れはマンデル=フレミング・モデルや為替レートのオーバーシューティング・モデルにもつながっています。

実証研究とJカーブ

ハウタッカーとマギー(1969年)は主要国の輸出入の所得弾力性と価格弾力性を推計し、その後の研究の基準を築きました。バーマニ=オスクーイとニルーマンド(1998年)は、長期の価格弾力性で見れば多くの国でマーシャル=ラーナー条件が成り立つと報告し、ボイド、カポラーレ、スミス(2001年)は共和分分析によって同様の結論を得ました。ただし短期には、契約や慣行のために輸出入の数量がゆっくりとしか調整されないため、条件が成り立たないことがあります。そのため、切り下げの直後に貿易収支が一時的に悪化し、その後改善するJカーブ効果が生じえます。バーマニ=オスクーイとヘガティ(2010年)は関連する研究を幅広く整理しています。

よくある質問

マーシャル=ラーナー条件を簡単に説明すると?
通貨の価値が下がったとき、輸出と輸入の数量が十分に大きく反応する場合にのみ貿易収支が改善するという条件です。
条件が成り立たないとどうなりますか?
弾力性の和が1より小さいと、輸入代金の増加が数量の変化を上回るため、通貨安がかえって貿易収支を悪化させることがあります。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Marshall, A. (1923). Money, Credit and Commerce. London: Macmillan.
  2. Lerner, A. P. (1944). The Economics of Control: Principles of Welfare Economics. New York: Macmillan.
  3. Bickerdike, C. F. (1920). The instability of foreign exchange. Economic Journal, 30(117), 118–122.
  4. Robinson, J. (1937). The foreign exchanges. In Essays in the Theory of Employment (pp. 183–209). London: Macmillan.
  5. Metzler, L. A. (1948). The theory of international trade. In H. S. Ellis (Ed.), A Survey of Contemporary Economics (pp. 210–254). Philadelphia: Blakiston.
  6. Harberger, A. C. (1950). Currency depreciation, income, and the balance of trade. Journal of Political Economy, 58(1), 47–60.
  7. Alexander, S. S. (1952). Effects of a devaluation on a trade balance. IMF Staff Papers, 2(2), 263–278.
  8. Houthakker, H. S., & Magee, S. P. (1969). Income and price elasticities in world trade. Review of Economics and Statistics, 51(2), 111–125.
  9. Dornbusch, R. (1975). Exchange rates and fiscal policy in a popular model of international trade. American Economic Review, 65(5), 859–871.
  10. Krugman, P. R., & Obstfeld, M. (1988). International Economics: Theory and Policy. Glenview, IL: Scott, Foresman.
  11. Bahmani-Oskooee, M., & Niroomand, F. (1998). Long-run price elasticities and the Marshall–Lerner condition revisited. Economics Letters, 61(1), 101–109.
  12. Boyd, D., Caporale, G. M., & Smith, R. (2001). Real exchange rate effects on the balance of trade: Cointegration and the Marshall–Lerner condition. International Journal of Finance & Economics, 6(3), 187–200.
  13. Bahmani-Oskooee, M., & Hegerty, S. W. (2010). The J- and S-curves: A survey of the recent literature. Journal of Economic Studies, 37(6), 580–596.

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この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。