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ロトカ=ヴォルテラの方程式

🔬 自然科学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
ロトカ=ヴォルテラの方程式は、捕食者と被食者という2種の個体数の変化を一対の微分方程式で表した、数理生態学の基本モデルです。アメリカのアルフレッド・ロトカ(1925年)とイタリアのヴィト・ヴォルテラ(1926年)がそれぞれ独立に提案し、2種の個体数が一定の位相のずれを保ちながら果てしなく周期的に振動するという結果を示します。
目次
  1. 1. 起源と基本モデル
  2. 2. 競争方程式と理論の拡張
  3. 3. 実験・野外での検証と他分野への応用
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

起源と基本モデル

アルフレッド・ロトカ(1925年)は、振動する化学反応を研究するなかで、同じ数学的構造を生物どうしの関係に当てはめました。ヴィト・ヴォルテラ(1926年)は、娘婿の海洋生物学者ウンベルト・ダンコーナから、第一次世界大戦中に漁業が縮小した時期にアドリア海でサメなど捕食性の魚の割合が増えたというデータを示され、それを説明するために独自に同じモデルをつくりました。モデルでは、被食者は捕食者がいなければ指数関数的に増え、捕食者と出会う頻度に比例して減ります。捕食者は食べた分だけ増え、一定の割合で死亡します。この単純な仮定から、被食者が増えると続いて捕食者が増え、捕食者が増えると被食者が減り、やがて捕食者も減るという循環が果てしなく繰り返されます。キングスランド(1985年)は、こうしたモデルが個体群生態学を数理的な科学へと変えていった過程を歴史的にたどっています。

競争方程式と理論の拡張

ロトカとヴォルテラは、同じ資源をめぐって争う2種の競争方程式も示しました。ガウゼ(1934年)はゾウリムシの実験でこれを検証し、同じ生態的地位を持つ2種は長く共存できないという競争排除則の根拠を築きました。基本的な捕食モデルは、振動の大きさが初期条件によって決まる「中立的な周期」を生むという限界があるため、ホリング(1959年)は、餌の密度が高まると捕食者の摂食量が飽和する「機能の反応」を導入しました。ローゼンツヴァイクとマッカーサー(1963年)はグラフによる分析で安定性の条件を整理し、ローゼンツヴァイク(1971年)は被食者の環境収容力を高めるとかえって系が不安定になりうるという「富栄養化のパラドックス」を示しました。メイ(1973年)は多くの種からなる群集で複雑性と安定性の関係を分析しました。

実験・野外での検証と他分野への応用

ハフェイカー(1958年)はオレンジとダニを用いた実験で、生息環境を空間的に複雑にした場合にのみ捕食者と被食者の振動が持続することを示しました。カナダオオヤマネコとカンジキウサギの毛皮取引の記録はこのモデルの代表例としてよく紹介されますが、ターチン(2003年)は、実際の個体数の周期には餌植物、複数の捕食者、季節性といった要因も関わっているとまとめています。この方程式は生態学を超えても使われています。経済学者グッドウィン(1967年)は同じ構造を用いて、賃金シェアと雇用率が循環する成長循環モデルをつくり、マレー(2002年)の数理生物学の教科書は、これを化学や生物学の動態を学ぶ出発点として扱っています。

よくある質問

ロトカ=ヴォルテラの方程式を簡単に説明すると?
餌が増えると捕食者が増え、捕食者が増えると餌が減り、餌が減ると再び捕食者が減るという循環を数式で表したモデルです。
このモデルは現実を正確に説明できますか?
基本モデルはとても単純なので、現実の個体数の変化をそのまま再現することはできません。むしろ機能の反応、環境収容力、空間構造などを加えた拡張モデルの出発点として使われています。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Lotka, A. J. (1925). Elements of Physical Biology. Baltimore: Williams & Wilkins.
  2. Volterra, V. (1926). Fluctuations in the abundance of a species considered mathematically. Nature, 118(2972), 558–560.
  3. Volterra, V. (1931). Leçons sur la théorie mathématique de la lutte pour la vie. Paris: Gauthier-Villars.
  4. Gause, G. F. (1934). The Struggle for Existence. Baltimore: Williams & Wilkins.
  5. Huffaker, C. B. (1958). Experimental studies on predation: Dispersion factors and predator–prey oscillations. Hilgardia, 27(14), 343–383.
  6. Holling, C. S. (1959). Some characteristics of simple types of predation and parasitism. Canadian Entomologist, 91(7), 385–398.
  7. Rosenzweig, M. L., & MacArthur, R. H. (1963). Graphical representation and stability conditions of predator–prey interactions. American Naturalist, 97(895), 209–223.
  8. Rosenzweig, M. L. (1971). Paradox of enrichment: Destabilization of exploitation ecosystems in ecological time. Science, 171(3969), 385–387.
  9. May, R. M. (1973). Stability and Complexity in Model Ecosystems. Princeton: Princeton University Press.
  10. Goodwin, R. M. (1967). A growth cycle. In C. H. Feinstein (Ed.), Socialism, Capitalism and Economic Growth (pp. 54–58). Cambridge: Cambridge University Press.
  11. Kingsland, S. E. (1985). Modeling Nature: Episodes in the History of Population Ecology. Chicago: University of Chicago Press.
  12. Murray, J. D. (2002). Mathematical Biology I: An Introduction (3rd ed.). New York: Springer.
  13. Turchin, P. (2003). Complex Population Dynamics: A Theoretical/Empirical Synthesis. Princeton: Princeton University Press.

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この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。