動因低減説とは?
動因低減説は、身体の欠乏が行動を引き起こす力になると考える動機づけ理論です。「動因(drive)」という言葉はウッドワース(1918)が使い始め、クラーク・ハルが1943年の『行動の原理』で学習理論と結びつけて体系化しました。食べ物や水が不足すると欲求が生じ、それが不快な緊張状態である動因を引き起こします。食べたり飲んだりして動因が減ると身体はホメオスタシス(恒常性)を取り戻し、動因を減らした行動は強化されて繰り返されやすくなります。
一次的動因と二次的動因
| 種類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 一次的動因 | 生まれつきの、生存に直結する生理的動因 | 空腹、渇き、痛みの回避、睡眠 |
| 二次的動因 | 一次的動因と結びついて学習された動因 | お金、称賛、地位への欲求 |
ハルの公式は何を意味するのか?
ハルは行動の起こりやすさ(反応ポテンシャル)を習慣強度×動因で表しました。どれほどよく学習された行動でも動因がゼロなら現れず、動因が強くても学習された習慣がなければ行動にはつながらない、という意味です。のちにハルは報酬の大きさや魅力である誘因を変数に加えました。
限界と代わりの理論
満腹なのにデザートを食べる、ジェットコースターやエクストリームスポーツのようにわざわざ緊張を高める、といった行動は動因の低減では説明しにくいものです。バーライン(1960)は好奇心や探索行動を研究し、最適な覚醒水準を求めるとする覚醒理論への道を開きました。現在では生理的動機づけを説明する古典的理論として学ばれ、マズローの欲求階層説や自己決定理論など動機づけ理論全体と比較されます。強化の考え方は強化理論にもつながります。
よくある質問
- 欲求と動因はどう違いますか?
- 欲求は身体に何かが足りない生理的な状態で、動因はその欠乏によって生じる心理的な緊張、つまり行動へと駆り立てる力です。
- 試験ではどう出題されますか?
- 動機づけ理論の出発点として、覚醒理論・誘因理論・人間性心理学の動機づけ論との比較問題でよく問われます。
出典確認日:2026-10-25
参考文献
- Hull, C. L. (1943). Principles of Behavior: An Introduction to Behavior Theory. New York: Appleton-Century.
- Woodworth, R. S. (1918). Dynamic Psychology. New York: Columbia University Press.
- Berlyne, D. E. (1960). Conflict, Arousal, and Curiosity. New York: McGraw-Hill.
