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効率賃金仮説

📈 経済学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
効率賃金仮説は、企業が労働の需要と供給が一致する市場清算水準より高い賃金を自発的に支払い、その理由は高い賃金が労働者の努力、離職率、応募者の質を改善して生産性を高めるためだとする労働経済学の理論です。その結果、非自発的失業が持続しうるとされます。
目次
  1. 1. 基本的な考え方
  2. 2. 4つのモデル
  3. 3. 証拠とマクロ的含意
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

基本的な考え方

古典的な労働市場モデルでは、失業があれば賃金が下がって市場が清算されます。しかし現実には、失業者がより低い賃金で働くと言っても企業が賃金を下げない場合が多くあります。効率賃金仮説はその理由を、賃金が生産性に影響することに求めます。ライベンシュタイン(1957年)は途上国で賃金が栄養状態を改善して労働能力を高めると考え、ソロー(1979年)は労働者の努力が賃金に依存するなら、企業は賃金1%の引き上げが努力を1%高める水準、すなわち「ソロー条件」で賃金を決めることを示しました。この賃金は効率単位あたりの労働費用を最小化し、市場清算賃金より高くなりえます。イエレン(1984年)、アカロフとイエレン(1986年)はこれらの研究を整理しました。

4つのモデル

第一に、シャピロとスティグリッツ(1984年)の「怠業防止モデル」です。企業は労働者の努力を完全に監視できないため、怠けて発覚し解雇されると損失が大きくなるよう高い賃金を払います。すべての企業がそうすると失業が生じ、失業は解雇のコストを高める「労働者規律装置」となります。これはモラル・ハザードとエージェンシー問題の応用です。第二に、サロップ(1979年)の「離職モデル」は高い賃金が離職を減らし採用・訓練費用を節約すると考えます。第三に、ワイス(1980年)の「逆選択モデル」は高い賃金がより有能な応募者を引きつけると考えます。第四に、アカロフ(1982年)の「贈与交換モデル」は、企業が基準より高い賃金という贈り物をすれば労働者はより大きな努力で報いると考え、アカロフとイエレン(1990年)は公正と感じる賃金より低いと努力を減らすという「公正賃金・努力仮説」へ発展させました。フェールら(1993年)の実験はこうした互恵性が市場清算を妨げる証拠を示しました。

証拠とマクロ的含意

代表的な事例は1914年にヘンリー・フォードが日給を約2.34ドルから5ドルに引き上げたことです。ラフとサマーズ(1987年)は、その後離職率と欠勤率が大きく下がり生産性が上がって効率賃金の特徴を示したと分析しました。クルーガーとサマーズ(1988年)は、同程度の能力の労働者でも産業によって賃金が体系的に異なる産業間賃金格差を効率賃金で説明しました。マクロ的には、効率賃金は労働供給が需要を上回っても賃金が下がらない実質賃金の硬直性と非自発的失業を説明し、ニューケインジアン経済学の中心的なミクロ的基礎となりました。また自然失業率が正である理由も示します。批判としては、企業は高い賃金の代わりに入社保証金や年功賃金のような成果連動契約を使えるという指摘(カッツ、1986年)や、努力を直接測定しにくいという実証上の限界があります。

よくある質問

効率賃金仮説を簡単に言うと?
会社がわざと市場水準より高い給料を払うと、社員がより熱心に働き、辞めにくくなり、優秀な人材が集まるので、結局会社の得になるという理論です。
効率賃金はなぜ失業を生むのですか?
すべての企業が市場清算水準より高い賃金を払うと働きたい人が仕事より多くなりますが、賃金を下げると生産性が落ちるため企業は賃金を下げず、非自発的失業が残ります。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Shapiro, C., & Stiglitz, J. E. (1984). Equilibrium unemployment as a worker discipline device. American Economic Review, 74(3), 433–444.
  2. Akerlof, G. A. (1982). Labor contracts as partial gift exchange. Quarterly Journal of Economics, 97(4), 543–569.
  3. Akerlof, G. A., & Yellen, J. L. (Eds.). (1986). Efficiency Wage Models of the Labor Market. Cambridge: Cambridge University Press.
  4. Akerlof, G. A., & Yellen, J. L. (1990). The fair wage–effort hypothesis and unemployment. Quarterly Journal of Economics, 105(2), 255–283.
  5. Solow, R. M. (1979). Another possible source of wage stickiness. Journal of Macroeconomics, 1(1), 79–82.
  6. Leibenstein, H. (1957). Economic Backwardness and Economic Growth. New York: Wiley.
  7. Salop, S. C. (1979). A model of the natural rate of unemployment. American Economic Review, 69(1), 117–125.
  8. Weiss, A. (1980). Job queues and layoffs in labor markets with flexible wages. Journal of Political Economy, 88(3), 526–538.
  9. Raff, D. M. G., & Summers, L. H. (1987). Did Henry Ford pay efficiency wages? Journal of Labor Economics, 5(4), S57–S86.
  10. Krueger, A. B., & Summers, L. H. (1988). Efficiency wages and the inter-industry wage structure. Econometrica, 56(2), 259–293.
  11. Katz, L. F. (1986). Efficiency wage theories: A partial evaluation. NBER Macroeconomics Annual, 1, 235–276.
  12. Fehr, E., Kirchsteiger, G., & Riedl, A. (1993). Does fairness prevent market clearing? An experimental investigation. Quarterly Journal of Economics, 108(2), 437–459.
  13. Yellen, J. L. (1984). Efficiency wage models of unemployment. American Economic Review, 74(2), 200–205.

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この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。