概念と出発点
オルポート(1954年)の接触仮説は、適切な条件のもとで集団間の直接接触が偏見を減らすと考えました。しかし居住地や学校が分かれている社会では、直接会う機会そのものが少なくなります。ライトら(1997年)は、直接接触の代わりに、内集団成員が外集団成員と親しいことを「知るだけでも」偏見が減りうると提案しました。彼らは調査研究で、外集団の友人をもつ内集団の知人が多いほど偏見が低いことを示し、実験室で集団間の友情を見た参加者の外集団への態度がよくなることも確かめました。
仕組み
ライトら(1997年)はいくつかの経路を示しました。直接会わないので集団間の不安が生じず、内集団の友人が外集団と親しくする姿は「私たちの集団では外集団と付き合ってもよい」という規範として受け取られます。また友人を自分の一部と感じるため、友人と親しい外集団の人も自己に含まれるような自己拡張が起こります。ターナーら(2008年)は、不安の低減、内集団と外集団の規範の認識、外集団の自己への包含という経路が実際に効果を媒介することを検証しました。ペティグルーら(2007年)はドイツの大規模調査で、間接接触がとくに規範の認識を通じて偏見を減らすことを示しました。
介入と総合
キャメロンら(2006年)は、イギリスの小学生にイギリスの子どもと難民の子どもが友だちになる物語を読ませ、難民への態度がよくなることを示しました。ヴェッツァーリら(2014年)は、本やメディア、物語を通じた代理接触まで含めて間接接触の研究をまとめ、想像接触とともに直接接触への準備段階として使えると提案しました。ジョウら(2019年)は20年の研究をメタ分析し、拡張接触が偏見の低減と意味のある関連をもち、直接接触とは独立にも効果があるという結果を報告しました。ただし効果の大きさは直接接触より小さい傾向があります。
よくある質問
- 拡張接触仮説を簡単に言うと?
- 自分が直接会わなくても、友人が別の集団の人と親しいと知れば、その集団への偏見が減るという仮説です。
- 直接接触と比べてどんな利点がありますか?
- 直接会う機会が少ない状況でも使え、初対面の不安なしに態度を変えられるという利点があります。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
- Allport, G. W. (1954). The Nature of Prejudice. Cambridge, MA: Addison-Wesley. 接触仮説の原典で、拡張接触がどの理論から生まれたかを見るのに参考になります。
- Wright, S. C., Aron, A., McLaughlin-Volpe, T., & Ropp, S. A. (1997). The extended contact effect: Knowledge of cross-group friendships and prejudice. Journal of Personality and Social Psychology, 73(1), 73–90. 拡張接触効果を提案し検証した原典で、概念と仕組みを見るのに役立ちます。
- Cameron, L., Rutland, A., Brown, R., & Douch, R. (2006). Changing children's intergroup attitudes toward refugees: Testing different models of extended contact. Child Development, 77(5), 1208–1219. 物語の読み聞かせで子どもの難民への態度を変えた介入研究で、教育現場での応用を見るのに参考になります。
- Pettigrew, T. F., Christ, O., Wagner, U., & Stellmacher, J. (2007). Direct and indirect intergroup contact effects on prejudice: A normative interpretation. International Journal of Intercultural Relations, 31(4), 411–425. 間接接触が規範認識を通じて偏見を減らすことを示した大規模調査研究で、規範の仕組みを見るのに役立ちます。
- Turner, R. N., Hewstone, M., Voci, A., & Vonofakou, C. (2008). A test of the extended intergroup contact hypothesis: The mediating role of intergroup anxiety, perceived ingroup and outgroup norms, and inclusion of the outgroup in the self. Journal of Personality and Social Psychology, 95(4), 843–860. 不安、規範、自己への包含という媒介経路をまとめて検証した研究で、効果が生じる理由を見るのに参考になります。
- Vezzali, L., Hewstone, M., Capozza, D., Giovannini, D., & Wölfer, R. (2014). Improving intergroup relations with extended and vicarious forms of indirect contact. European Review of Social Psychology, 25(1), 314–389. 拡張接触と代理接触の研究を幅広くまとめた概観で、研究全体を見るのに役立ちます。
- Zhou, S., Page-Gould, E., Aron, A., Moyer, A., & Hewstone, M. (2019). The extended contact hypothesis: A meta-analysis on 20 years of research. Personality and Social Psychology Review, 23(2), 132–160. 20年の研究を総合したメタ分析で、効果の大きさと条件を確かめるのに参考になります。
