概要
外部性(externality、外部効果)とは、ある経済主体の生産や消費が市場価格を通さずに第三者に影響を与える現象です。マーシャル(1890)は産業が一地域に集まるときに生じる「外部経済」を論じ、ピグー(1920)が私的費用と社会的費用の差として整理したことで、公共経済学の中核概念となりました。
正の外部性と負の外部性
- 負の外部性:工場による大気・水質汚染、騒音、交通渋滞のように、他者に費用を押しつける場合です。生産者がこの費用を負担しないため、市場は社会的に適正な量より多く生産します。
- 正の外部性:教育、研究開発、美しい庭のように、他者にも利益が及ぶ場合です。恩恵への対価を受け取れないため、市場は適正量より少なく供給します。
グラフで見ると、負の外部性があるとき社会的限界費用曲線は私的限界費用曲線より上にあり、その差だけ過剰生産と社会的厚生の損失が生じます。企業にとっては、この差が将来、税や負担金、排出コストのような実際の費用に変わりうるという点が、投資や経営の判断で重要になります。
対策:内部化
外部性を価格に反映させることを内部化といいます。
- ピグー税と補助金:負の外部性にはその大きさだけ課税し、正の外部性には補助金を与えて、私的費用と社会的費用を一致させます。炭素税が代表例です。
- 直接規制:排出基準や使用禁止のように量を直接制限します。長所と短所は政府規制の理論で扱います。
- コースの定理:コース(1960)は、財産権が明確で取引費用が小さければ、権利を誰に与えても当事者間の交渉によって効率的な結果に至ると考えました。
- 排出量取引制度:総排出量の上限を定め、排出の権利を売買させます。EUは2005年、韓国は2015年に温室効果ガスの排出量取引制度を始めました。
限界と論争
現実には外部性の大きさを正確に測るのが難しく、適正な税率を決めるのは容易ではありません。コースの定理は、被害者が多く取引費用が大きい大気汚染のような問題には当てはめにくく、規制には政府の失敗の危険があります。誰のものでもない資源が乱用される共有地の悲劇も外部性と密接に結びついています。
経済の勉強とESGの理解に生かす
外部性は、経済学原論の市場の失敗の単元、公務員・公企業の経済試験、環境・エネルギー分野の就職面接でよく扱われます。最近では企業のESG(環境・社会・ガバナンス)開示や炭素コスト、排出枠価格の動向を理解する基本概念としても使われています。答案では、グラフで過剰生産と厚生損失を示し、ピグー税・規制・コース的交渉・排出量取引の長所と短所を比べる構成がよいでしょう。地球環境の変化全体の文脈については人新世も参照してください。
出典確認日:2026-10-16
参考文献
- Marshall, A. (1890). Principles of Economics. London: Macmillan.
- Pigou, A. C. (1920). The Economics of Welfare. London: Macmillan.
- Coase, R. H. (1960). The problem of social cost. Journal of Law and Economics, 3, 1–44.
- Hardin, G. (1968). The tragedy of the commons. Science, 162(3859), 1243–1248.