概要
フレーミング効果(framing effect)は、論理的には同じ選択肢でも、どのような枠組み(フレーム)で示されるかによって選好が変わる現象です。合理的選択理論は表現が違っても選択は同じになるはずだと考えますが、トヴェルスキーとカーネマン(1981)は実験によってこの前提が崩れることを示しました。
代表的な実験とプロスペクト理論
トヴェルスキーとカーネマンは、600人の命がかかった架空の政策選択の問題を出しました。「200人が確実に助かる」と「1/3の確率で600人全員が助かり、2/3の確率で誰も助からない」から選ばせると、72%が確実なほうを選びました。同じ内容を「400人が確実に死ぬ」と「1/3の確率で誰も死なず、2/3の確率で600人全員が死ぬ」に言い換えると、78%がリスクのあるほうを選びました。
この結果は、カーネマンとトヴェルスキー(1979)のプロスペクト理論で説明されます。人は結果を参照点に対する利得と損失として評価し、利得の前ではリスクを避け、損失の前ではリスクをとる傾向があります。また同じ大きさでも損失を利得より大きく感じる損失回避が現れます。保険、積立、投資商品のように利得と損失を同時に考える金融の判断では、この傾向が特に重要です。
3つの類型
レヴィンら(1998)はフレーミングを3つに分けました。
- リスク選択フレーミング:上の実験のように、リスクの異なる選択肢を利得または損失として表します。
- 属性フレーミング:ひとつの対象の特性を肯定的または否定的に表します。レヴィンとゲース(1988)の実験では、同じひき肉でも「赤身75%」と表示したほうが「脂肪25%」よりも味や品質が良いと評価されました。
- 目標フレーミング:行動すれば得られる利益を強調するか、行動しなければ失うものを強調するかの違いです。
限界と論争
フレーミング効果の大きさは類型や課題によって大きく異なり、テーマについての知識が多かったり、深く考えるよう促されたりすると弱まることもあります。また「同じ内容」であっても、表現の仕方そのものが話し手の意図や情報を伝えているという反論もあります。メディア研究で使われるニュースのフレーミングは、これと関連はあるものの別の概念として扱われることもあります。
マーケティング・金融の判断・政策に生かす
マーケティングでは「割引」と「おまけ付き」、「月額」と「年額」のように同じ条件を違って見せるのに使われ、政策では年金や貯蓄制度で初期設定を加入にするナッジの設計とあわせて議論されます。消費者の立場では、金融商品や料金プランを比べるときに、表現を置き換えて同じ単位(総費用、年利など)で計算し直すことがフレーミングの影響を減らす方法です。数字の出発点が与える影響はアンカリング効果で、損失を確定させたくない心理はサンクコストで続けて読めます。
出典確認日:2026-10-16
参考文献
- Kahneman, D., & Tversky, A. (1979). Prospect theory: An analysis of decision under risk. Econometrica, 47(2), 263–291.
- Tversky, A., & Kahneman, D. (1981). The framing of decisions and the psychology of choice. Science, 211(4481), 453–458.
- Levin, I. P., & Gaeth, G. J. (1988). How consumers are affected by the framing of attribute information before and after consuming the product. Journal of Consumer Research, 15(3), 374–378.
- Levin, I. P., Schneider, S. L., & Gaeth, G. J. (1998). All frames are not created equal: A typology and critical analysis of framing effects. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 76(2), 149–188.