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歴史的制度論

🏛️ 政治・行政学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
歴史的制度論とは、政治制度が歴史的な過程の中でつくられ、いったん定着した制度がその後の行為者の戦略や選好、政策の結果を構造化すると考える政治学のアプローチです。1990年代初めにスヴェン・スタインモ、キャスリーン・セーレンらが名づけ、合理的選択制度論、社会学的制度論とともに新制度論の一つの流れとされます。時間的な順序、経路依存性、決定的分岐点といった概念で、国ごとに政治や政策が異なって発展する理由を説明します。
目次
  1. 1. 制度が政治をつくる
  2. 2. 経路依存性と決定的分岐点
  3. 3. 漸進的変化と批判
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

制度が政治をつくる

1950〜60年代の行動論的政治学は個人や集団の行動に注目し、制度はその行動が繰り広げられる舞台程度にみなしていました。これに対しスタインモら(1992年)は、制度が誰がどのような資源やアクセスをもつのか、行為者が何を望み、どう行動するのが合理的なのかを形づくると考えました。たとえば似た経済危機に対しても各国の対応が異なったのは、選挙制度、労使関係、官僚構造が異なっていたからだというのです。ホールとテイラー(1996年)は、このアプローチが権力の非対称性と歴史的経路を強調する点で新制度論の他の流れと区別されると整理しました。

経路依存性と決定的分岐点

ピアソン(2000年)は経済学の収穫逓増の概念を借りて、いったんある経路が選ばれると、その経路に従うほど利益が大きくなり、引き返すコストも大きくなるため、制度が自らを強化すると説明しました。そのため、初期の小さな出来事や選択の順序が長期的に大きな違いを生みうるのです。マホーニー(2000年)はこうした経路依存性を、自己強化的な経路と出来事が連鎖的に反応する経路とに分けました。カポッチャとケレメン(2007年)は、制度の方向が大きく分かれる短い期間を「決定的分岐点」と定義し、この時期には行為者の選択が普段よりはるかに大きな影響を与えると考えました。

漸進的変化と批判

初期の歴史的制度論は、長い安定期と短い激変期を対比させ、制度変化を主に外部からの衝撃で説明しているという批判を受けました。これに対してシュトレークとセーレン(2005年)は、制度が目立たずに少しずつ変わる仕方を四つに整理しました。既存のルールを新しいルールに置き換える「置換」、古い制度の上に新しい制度を重ねる「重層化」、環境が変わったのに制度をそのままにして効果が変わる「漂流」、既存の制度を新しい目的に使う「転用」です。セーレン(1999年)は、このアプローチが合理的選択の視点とますます対話していると考えましたが、事例中心のため一般化が難しく、事後的な説明にとどまりうるという指摘も受けています。

よくある質問

歴史的制度論を簡単に言うと?
過去につくられた制度がその後の人々の選択や政治の結果を規定し続けると考える見方です。そのため、似た問題に対しても国ごとに歴史的な経路によって異なる政策が出てくると説明します。
経路依存性とは何ですか?
いったん選ばれた経路に従うほど、その道を維持する利益が大きくなり、変えるコストも大きくなって、初期の選択が長期的に固定される現象です。歴史的制度論の中核的な概念です。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Steinmo, S., Thelen, K., & Longstreth, F. (Eds.). (1992). Structuring Politics: Historical Institutionalism in Comparative Analysis. Cambridge: Cambridge University Press. 歴史的制度論という名を広めた編著で、このアプローチの基本的な視点と初期の事例を見るのに参考になります。
  2. Hall, P. A., & Taylor, R. C. R. (1996). Political science and the three new institutionalisms. Political Studies, 44(5), 936–957. 歴史的・合理的選択・社会学的制度論を比較した古典で、三つのアプローチの違いを整理するのに役立ちます。
  3. Thelen, K. (1999). Historical institutionalism in comparative politics. Annual Review of Political Science, 2, 369–404. 歴史的制度論の研究の流れを整理したレビューで、中核的な概念と論点を一度に見るのに参考になります。
  4. Pierson, P. (2000). Increasing returns, path dependence, and the study of politics. American Political Science Review, 94(2), 251–267. 収穫逓増の論理で経路依存性を政治学に応用した論文で、制度がなぜ変わりにくいのかを理解するのに役立ちます。
  5. Mahoney, J. (2000). Path dependence in historical sociology. Theory and Society, 29(4), 507–548. 自己強化的な経路と反応的連鎖を区別した論文で、経路依存性の概念を精緻に見るのに参考になります。
  6. Streeck, W., & Thelen, K. (Eds.). (2005). Beyond Continuity: Institutional Change in Advanced Political Economies. Oxford: Oxford University Press. 置換・重層化・漂流・転用といった漸進的な制度変化の類型を示した本で、制度変化を説明するのに役立ちます。
  7. Capoccia, G., & Kelemen, R. D. (2007). The study of critical junctures: Theory, narrative, and counterfactuals in historical institutionalism. World Politics, 59(3), 341–369. 決定的分岐点の概念を厳密に定義した論文で、制度が大きく分かれる瞬間を分析するのに参考になります。

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この記事は2026年10月27日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。