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収穫逓増

📈 経済学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
収穫逓増とは、生産要素の投入や生産規模を増やしたときに産出がその比率以上に増える現象で、古典的な収穫逓減の法則と対比される経済学の概念です。
目次
  1. 1. 概念と区別
  2. 2. 成長理論と貿易理論
  3. 3. 情報経済と勝者総取り
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

概念と区別

経済学でいう「収穫」とは、投入に対する産出の反応のことです。他の要素を固定したまま一つの要素だけを増やすと追加の産出がしだいに減るのが収穫逓減の法則で、限界効用逓減とともに新古典派経済学の基本的な仮定です。一方、すべての投入を同じ比率で増やしたとき産出がそれより大きな比率で増えることを「規模に関する収穫逓増」といい、広くは生産や利用が増えるほど単位あたりの成果がよくなる現象を総称して収穫逓増と呼びます。平均費用が下がる規模の経済はその代表的な結果です。アダム・スミス(1776年)は市場が大きくなるほど分業が深まり生産性が上がると考え、アルフレッド・マーシャル(1890年)は産業が一地域に集まるときに生じる外部経済を説明しました。

成長理論と貿易理論

収穫逓増は完全競争モデルとなじみにくい概念です。ピエロ・スラッファ(1926年)が指摘したように、平均費用が下がり続ければ最大の企業が市場を独占してしまうからです。そのため長く周縁に置かれましたが、アリン・ヤング(1928年)は市場拡大と分業が互いを強め合う累積的成長の過程を、ニコラス・カルドア(1966年)は製造業の生産性が生産量とともに上昇する法則を強調しました。1980年代以降、ポール・ローマー(1986年、1990年)は、アイデアが多くの人が同時に使える非競合財であるため知識の蓄積が収穫逓増を生み持続的成長をもたらすという内生的成長理論を築き、2018年にノーベル賞を受賞しました(ジョーンズ、2019年)。ポール・クルーグマン(1979年、1991年)は収穫逓増と独占的競争によって似た国どうしの貿易と産業の地域的集中を説明し、2008年にノーベル賞を受賞しました。

情報経済と勝者総取り

ブライアン・アーサー(1994年、1996年)は、ハイテク産業では高い初期開発費、ほぼゼロの複製費用、ネットワーク効果、利用者の学習効果が重なり、収穫逓増が強く現れると考えました。この場合、小さな初期の優位が増幅されるマタイ効果が生じ、市場は一つの標準に傾く経路依存的なロックインに陥りえます。シャピロとヴァリアン(1999年)はこれを情報財の価格設定と標準競争の戦略として整理しました。収穫逓増はプラットフォーム企業の集中や競争政策をめぐる議論の理論的背景となっていますが、混雑や調整コストのため無限には続かないという反論もあります。

よくある質問

収穫逓増と規模の経済は同じ意味ですか?
密接に関連しますが同じではありません。規模の経済は生産量が増えると平均費用が下がるという費用面の概念で、収穫逓増は投入の増加に比べて産出がより大きく増える現象を広く指します。
なぜ知識は収穫逓増を生むのですか?
アイデアは一人が使っても他の人が同時に使える非競合財なので、一度つくられればほとんど追加費用なしに無限に再利用できるからです。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Smith, A. (1776). An Inquiry into the Nature and Causes of the Wealth of Nations. London: W. Strahan and T. Cadell.
  2. Marshall, A. (1890). Principles of Economics. London: Macmillan.
  3. Young, A. A. (1928). Increasing returns and economic progress. Economic Journal, 38(152), 527–542.
  4. Sraffa, P. (1926). The laws of returns under competitive conditions. Economic Journal, 36(144), 535–550.
  5. Kaldor, N. (1966). Causes of the Slow Rate of Economic Growth of the United Kingdom. Cambridge: Cambridge University Press.
  6. Romer, P. M. (1986). Increasing returns and long-run growth. Journal of Political Economy, 94(5), 1002–1037.
  7. Romer, P. M. (1990). Endogenous technological change. Journal of Political Economy, 98(5), S71–S102.
  8. Krugman, P. (1979). Increasing returns, monopolistic competition, and international trade. Journal of International Economics, 9(4), 469–479.
  9. Krugman, P. (1991). Increasing returns and economic geography. Journal of Political Economy, 99(3), 483–499.
  10. Arthur, W. B. (1994). Increasing Returns and Path Dependence in the Economy. Ann Arbor: University of Michigan Press.
  11. Arthur, W. B. (1996). Increasing returns and the new world of business. Harvard Business Review, 74(4), 100–109.
  12. Shapiro, C., & Varian, H. R. (1999). Information Rules. Boston: Harvard Business School Press.
  13. Jones, C. I. (2019). Paul Romer: Ideas, nonrivalry, and endogenous growth. Scandinavian Journal of Economics, 121(3), 859–883.

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この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。