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合理的選択理論

👥 社会学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
合理的選択理論とは、個人が一貫した選好をもち、与えられた制約の中で期待される利益が最も大きい行動を選ぶと仮定し、そうした個人の選択の集積として政治・社会現象を説明しようとする社会科学のアプローチです。
目次
  1. 1. 基本的仮定と出発点
  2. 2. 社会科学全体への広がり
  3. 3. 批判と修正
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

基本的仮定と出発点

合理的選択理論は、社会現象を個人の行為の結果として説明する方法論的個人主義から出発します。中心的な仮定は3つです。個人は一貫して順序づけられる選好をもち、所得・時間・情報などの制約を受け、その中で期待効用が最も大きい選択肢を選ぶ、というものです。フォン・ノイマンとモルゲンシュテルン(1944年)の期待効用理論とゲーム理論が数学的な土台を提供しました。社会学では、社会的行動を報酬とコストの交換とみたジョージ・ホーマンズ(1958年)の交換理論が先駆的な形でした。ここでの「合理的」とは目標が正しいという意味ではなく、与えられた目標に照らして手段を一貫して選ぶという道具的な意味です。

社会科学全体への広がり

アンソニー・ダウンズ(1957年)は有権者と政党を効用を最大化する行為者としてモデル化し、政党の公約が中位投票者へ収斂するという結論とともに、1票が結果を変える確率はほぼないのになぜ人は投票するのかという「投票のパラドックス」を提起しました。マンサー・オルソン(1965年)は『集合行為論』で、集団が大きいほどただ乗りのために共通利益のための行動が起こりにくいことを示し、共有地の悲劇や囚人のジレンマと同様の問題を政治学に持ち込みました。ゲーリー・ベッカー(1976年)は結婚、出産、犯罪、差別までを経済学的な選択として分析しました。ジェームズ・コールマンの『社会理論の基礎』(1990年)は個人の行為から社会構造へと至るミクロ・マクロ連結を体系化し、ブリーンとゴールドソープ(1997年)は階層ごとの教育選択の違いから教育格差を説明しました。

批判と修正

ハーバート・サイモン(1955年)は、人は情報と計算能力の限界のため最適ではなく「十分に満足できる」選択肢を選ぶという限定合理性を提示しました。カーネマンとトヴェルスキー(1979年)のプロスペクト理論やフレーミング効果の研究は、同じ選択肢でも提示の仕方で選択が変わるなど、選好の一貫性の仮定が体系的に崩れることを示しました。グリーンとシャピロ(1994年)は、政治学の合理的選択研究が事後的に理論に合う説明をつくり出し、実証的な検証が弱いと批判しました。社会学では、規範、アイデンティティ、感情、社会構造の制約を軽視しているという指摘が構造機能主義・葛藤理論の側から出されました。これに対してエルスター(1989年)やヘクターと金澤(1997年)らは、合理性の仮定を緩め社会的文脈を組み込んだ「社会学的合理的選択理論」で応えています。

よくある質問

合理的選択理論は人が常に合理的だと考えているのですか?
厳密には、人が実際に常に合理的だという主張というより、そう仮定すると集団レベルの現象をうまく説明できるというモデル化の戦略に近いものです。行動経済学はこの仮定が崩れる状況を研究しています。
投票のパラドックスとは何ですか?
1票が選挙結果を変える確率はごく小さいのに投票には時間と労力がかかるため、純粋に損得だけで考えれば投票しないのが合理的なのに、多くの人が投票するという問題です。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. von Neumann, J., & Morgenstern, O. (1944). Theory of Games and Economic Behavior. Princeton, NJ: Princeton University Press.
  2. Downs, A. (1957). An Economic Theory of Democracy. New York: Harper & Row.
  3. Olson, M. (1965). The Logic of Collective Action. Cambridge, MA: Harvard University Press.
  4. Homans, G. C. (1958). Social behavior as exchange. American Journal of Sociology, 63(6), 597–606.
  5. Becker, G. S. (1976). The Economic Approach to Human Behavior. Chicago: University of Chicago Press.
  6. Simon, H. A. (1955). A behavioral model of rational choice. Quarterly Journal of Economics, 69(1), 99–118.
  7. Coleman, J. S. (1990). Foundations of Social Theory. Cambridge, MA: Harvard University Press.
  8. Elster, J. (1989). Nuts and Bolts for the Social Sciences. Cambridge: Cambridge University Press.
  9. Green, D. P., & Shapiro, I. (1994). Pathologies of Rational Choice Theory. New Haven, CT: Yale University Press.
  10. Kahneman, D., & Tversky, A. (1979). Prospect theory: An analysis of decision under risk. Econometrica, 47(2), 263–291.
  11. Hechter, M., & Kanazawa, S. (1997). Sociological rational choice theory. Annual Review of Sociology, 23, 191–214.
  12. Breen, R., & Goldthorpe, J. H. (1997). Explaining educational differentials: Towards a formal rational action theory. Rationality and Society, 9(3), 275–305.

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この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。