認識の歴史
1922年にバンティングとベストがインスリン治療を始めると、まもなく過量投与でけいれんや昏睡が起こることが知られました。1924年には米国の医師シール・ハリスが、糖尿病でない人にもインスリンの過剰分泌で低血糖が起こると報告しています。厳格な血糖管理が標準となった1990年代以降、低血糖は治療の最大の壁と見なされ、2017年に国際低血糖研究グループが70と54mg/dLを境にした3段階分類を提案しました。
症状と原因
初期には交感神経が反応して手の震え、冷や汗、動悸、強い空腹感が出ます。さらに下がると脳のエネルギーが不足し、集中力低下、ろれつが回らない、意識の混乱、けいれんへ進みます。糖尿病治療中のインスリンやSU薬の効き過ぎ、食事抜き、いつもより多い運動、空腹時の飲酒が典型的な原因です。胃の手術後に食後1〜3時間で起こる反応性低血糖はダンピング症候群の一型です。低血糖を繰り返すと警告症状が鈍る「無自覚性低血糖」になり、危険が増します。
対処と予防
意識があれば、ブドウ糖10g(砂糖なら20g)やブドウ糖入りジュースをすぐに摂り、15分後に測り直して改善しなければ繰り返します。チョコレートは脂肪で吸収が遅く不向きです。意識がない場合は口に物を入れず119番通報し、可能ならグルカゴン点鼻薬を使います。規則正しい食事、運動前の血糖チェック、飲酒時は何か食べること、持続血糖測定器の活用が予防になります。頻繁に起こるならHbA1cの目標や薬の量を主治医と見直しましょう。
この記事は一般的な健康情報であり、診断や治療に代わるものではありません。症状が続く場合は医師に相談してください。
よくある質問
- 糖尿病でなくても低血糖になりますか?
- まれですが、胃の手術後やインスリノーマ、副腎の病気、大量飲酒などで起こることがあります。
- 寝ている間の低血糖はどうわかりますか?
- 悪夢、寝汗でびっしょりになる、朝の頭痛が手がかりです。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
- International Hypoglycaemia Study Group. (2017). Glucose concentrations of less than 3.0 mmol/L (54 mg/dL) should be reported in clinical trials. Diabetes Care, 40(1), 155–157.
- Cryer, P. E. (2013). Mechanisms of hypoglycemia-associated autonomic failure in diabetes. NEJM, 369(4), 362–372.
- American Diabetes Association. (2025). Standards of Care in Diabetes—2025: 6. Glycemic goals and hypoglycemia.
