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キーストーン種

🔬 自然科学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
キーストーン種(中枢種)は、個体数や生物量に比べて群集や生態系の構造、種多様性に不釣り合いなほど大きな影響を与え、いなくなると生態系が大きく変わってしまう種を指す生態学の概念です。アーチの頂部の要石(キーストーン)にたとえて、ロバート・ペインが1969年に初めて用いました。
目次
  1. 1. 起源:ペインのヒトデ実験
  2. 2. 栄養カスケードと代表的な事例
  3. 3. 概念の精緻化と批判
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

起源:ペインのヒトデ実験

チャールズ・エルトン(1927年)は食物連鎖と生態ピラミッドの考え方で群集構造を説明しましたが、どの種がとりわけ重要なのかははっきりしていませんでした。ロバート・ペイン(1966年)は米国ワシントン州の岩礁潮間帯で、捕食性のヒトデ(Pisaster ochraceus)を継続的に取り除く実験を行いました。するとイガイが岩場を独占し、空間をめぐって競争していた他の種が追いやられて、種多様性が15種から8種に減りました。捕食者が優勢な競争者を抑えることで、多くの種の共存を可能にしていたのです。ペイン(1969年)は、このように群集の構造を支える種を、アーチを支える頂部の要石になぞらえて「キーストーン種」と呼びました。

栄養カスケードと代表的な事例

エステスとパルミサノ(1974年)はアリューシャン列島で、ラッコのいる島ではウニが少なくケルプの森が豊かである一方、ラッコのいなくなった島ではウニが増え、ケルプがほとんどない「磯焼け」状態になることを比較しました。このように最上位捕食者の影響が複数の栄養段階を通じて下へ伝わる現象を「栄養カスケード」と呼びます。エステスら(1998年)は、シャチがラッコを多く捕食し始めるとラッコが減り、ケルプの森が衰退した事例を報告し、外洋と沿岸の生態系のつながりを示しました。1995年のイエローストーン国立公園へのオオカミ再導入後、エルクの行動と個体数が変わり川辺の植生が回復したとするリップルとベシュタ(2004年)の「恐怖の生態学」の研究も広く知られていますが、その効果の大きさについては議論があります。エステスら(2011年)は、世界的な大型捕食者の減少が生態系を単純化させる「栄養段階の格下げ」に警鐘を鳴らしました。

概念の精緻化と批判

ミルズ、スーレ、ドーク(1993年)は、この用語があまりに広く使われて意味が曖昧になったと批判しました。パワーら(1996年)はキーストーン種を「生物量に比べて影響が不釣り合いに大きい種」と定義し、その影響を定量的に測る「群集重要度」の指標を提案しました。メンゲら(1994年)は、同じ種でも場所や環境によってキーストーンとしての役割が変わりうることを示しました。ジョーンズ、ロートン、シャハック(1994年)の「生態系エンジニア」の概念は、ビーバーのように物理的環境を変えて他の種の生息地をつくる種を指し、キーストーン種と重なる部分もありますが区別される概念です。シンバーロフ(1998年)は、単一種を中心とする保全戦略が景観単位の保全の時代にも有効かを問い、コッティー=ジョーンズとウィテカー(2012年)は概念を批判的に再検討しました。それでもキーストーン種の概念は、メタ個体群や島の生物地理学とともに、保全の優先順位づけや生態系の復元研究で広く用いられています。

よくある質問

キーストーン種を簡単に言うと?
数は多くなくても、いなくなると生態系全体が大きく変わってしまう、アーチの要石のように生態系を支える種です。
代表的なキーストーン種は何ですか?
ペインの実験のヒトデ、ウニを食べてケルプの森を守るラッコ、生態系に連鎖的な影響を与えるオオカミのような大型捕食者がよく挙げられます。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Elton, C. S. (1927). Animal Ecology. London: Sidgwick & Jackson.
  2. Paine, R. T. (1966). Food web complexity and species diversity. American Naturalist, 100(910), 65–75.
  3. Paine, R. T. (1969). A note on trophic complexity and community stability. American Naturalist, 103(929), 91–93.
  4. Estes, J. A., & Palmisano, J. F. (1974). Sea otters: Their role in structuring nearshore communities. Science, 185(4156), 1058–1060.
  5. Estes, J. A., Tinker, M. T., Williams, T. M., & Doak, D. F. (1998). Killer whale predation on sea otters linking oceanic and nearshore ecosystems. Science, 282(5388), 473–476.
  6. Mills, L. S., Soulé, M. E., & Doak, D. F. (1993). The keystone-species concept in ecology and conservation. BioScience, 43(4), 219–224.
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  8. Jones, C. G., Lawton, J. H., & Shachak, M. (1994). Organisms as ecosystem engineers. Oikos, 69(3), 373–386.
  9. Menge, B. A., Berlow, E. L., Blanchette, C. A., Navarrete, S. A., & Yamada, S. B. (1994). The keystone species concept: Variation in interaction strength in a rocky intertidal habitat. Ecological Monographs, 64(3), 249–286.
  10. Simberloff, D. (1998). Flagships, umbrellas, and keystones: Is single-species management passé in the landscape era? Biological Conservation, 83(3), 247–257.
  11. Ripple, W. J., & Beschta, R. L. (2004). Wolves and the ecology of fear: Can predation risk structure ecosystems? BioScience, 54(8), 755–766.
  12. Estes, J. A., Terborgh, J., Brashares, J. S., et al. (2011). Trophic downgrading of planet Earth. Science, 333(6040), 301–306.
  13. Cottee-Jones, H. E. W., & Whittaker, R. J. (2012). The keystone species concept: A critical appraisal. Frontiers of Biogeography, 4(3), 117–127.

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この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。