ゴルトンの発見と統計的な原理
ゴルトン(1886年)は、とても背の高い親の子どもはたいてい親より低く、とても背の低い親の子どもは親より高い傾向があることを発見し、これを「凡庸への回帰」と呼びました。彼は当初これを遺伝の現象と解釈しましたが、『自然的遺伝』(1889年)では、2つの変数の相関が完全でなければ必ず現れる統計的な性質だと気づきました。スティグラー(1986年、1997年)がまとめているように、この洞察は相関と回帰分析の誕生につながりました。観測値は、安定した真の水準と一時的な偶然の要素の和とみなせます。極端な値は偶然の要素が一方向に大きく働いた可能性が高く、次の測定ではその運が繰り返されないため、平均の側へ戻ります。相関係数が低いほど、回帰の幅は大きくなります。
認知的な錯覚とセクリストの誤謬
カーネマンとトヴェルスキー(1973年)は、人は予測をするときに平均への回帰を無視しがちであることを示しました。カーネマン(2011年)が紹介したイスラエル空軍の飛行教官の逸話が有名です。教官たちは、うまく飛んだ訓練生をほめると次は失敗し、失敗した訓練生を叱ると次は上達するので、罰のほうがほめるより効果的だと信じていましたが、これは極端な成績のあとに自然に起こる回帰を因果関係と取り違えたものでした。経済学では、セクリスト(1933年)が、収益率の高かった企業が時間とともに平均へ収束するのを見て『ビジネスにおける凡庸の勝利』を著しましたが、ホテリング(1933年)は、これは統計的な回帰にすぎず競争の法則を証明するものではないと反論しました。フリードマン(1992年)は、国家間の成長率の収束をめぐる研究でも同じ誤謬が繰り返されていると警告しています。
研究デザインと対処法
キャンベルとケニー(1999年)は、回帰のアーチファクトが事前・事後の比較研究の結論を系統的にゆがめうることを示しました。たとえば、試験の成績が最も低い生徒だけを選んで補習をすると、補習にまったく効果がなくても、次の試験では成績が上がったように見えます。ネッセルロード、スティグラー、バルテス(1980年)は変化の研究においてこの問題を扱い、ブランドとアルトマン(1994年)やバーネット、ファン・デル・ポルス、ドブソン(2005年)は、無作為化した対照群を置く、複数回の測定の平均で対象を選ぶといった対処法を示しました。シャルとスミス(2000年)は、野球の打率でもシーズン序盤の極端な記録が平均の方向へ回帰することを確認しています。回帰は、バークソンのパラドックスや生存者バイアスとともに、選ばれた標本を解釈するときに注意すべき代表的な現象です。
よくある質問
- 平均への回帰を簡単に言うと?
- 特によい結果や悪い結果には運が混じっていることが多いので、次はたいてい普段の水準に近い結果になる、ということです。
- 平均への回帰は、すべてが最終的に平均になるという意味ですか?
- いいえ。集団全体のばらつきが小さくなるという意味ではなく、極端な値で選ばれた対象の次の測定値が平均の方向へ動く傾向のことです。逆の方向から見ても同じように回帰が現れます。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
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- Secrist, H. (1933). The Triumph of Mediocrity in Business. Evanston, IL: Bureau of Business Research, Northwestern University.
- Hotelling, H. (1933). Review of The Triumph of Mediocrity in Business by Horace Secrist. Journal of the American Statistical Association, 28(184), 463–465.
- Friedman, M. (1992). Do old fallacies ever die? Journal of Economic Literature, 30(4), 2129–2132.
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