発見と2つの性質
1911年、オランダ・ライデン大学のヘイケ・カメルリング・オネスは、自ら液化に成功した液体ヘリウムで水銀を−269℃(4.2K)まで冷やすと電気抵抗が突然消えることを発見し、1913年にノーベル物理学賞を受けました。1933年にはドイツのヴァルター・マイスナーとロベルト・オクセンフェルトが、超伝導体は内部の磁場を完全に押し出すことを発見しました。超伝導体の上に磁石が浮かぶ有名な写真がこの「マイスナー効果」です。抵抗ゼロだけでは不十分で、マイスナー効果も示してはじめて本物の超伝導体と認められます。
しくみと高温超伝導体
1957年、ジョン・バーディーン、レオン・クーパー、ロバート・シュリーファーは、低温で2つの電子が結晶格子の振動を介してペア(クーパー対)を組み、散乱されずに一つの量子状態として動くという「BCS理論」でしくみを説明しました。巨視的なスケールで現れる量子現象という点で、量子もつれと同様に量子力学の不思議を示しています。1986年にIBMのベドノルツとミュラーが銅酸化物で35Kの超伝導を発見すると翌年ノーベル賞が贈られ、1987年には安価な液体窒素(77K)で冷やせる92KのYBCOが登場しました。高温超伝導の正確なしくみはまだ完全には解明されていません。
応用と室温超伝導の夢
超伝導体はすでに身近にあります。病院のMRIは超伝導電磁石で強い磁場を作り、JR東海のリニア中央新幹線、CERNの大型ハドロン衝突型加速器(LHC)でのヒッグス粒子発見、韓国KSTARのような核融合装置も超伝導磁石に頼っています。ただし極低温への冷却が必要でコストがかかります。2023年7月に韓国の研究者が室温・常圧の超伝導体だと発表した「LK-99」は世界的な注目と関連株の急騰を呼びましたが、各国の再現実験で抵抗ゼロもマイスナー効果も確認されず、磁石上の部分的な浮上は不純物の硫化銅によるものと結論づけられました。室温超伝導体は今も物理学の「聖杯」です。
よくある質問
- LK-99は結局、超伝導体ではなかったのですか?
- はい。韓国超伝導低温学会の検証委員会を含む複数の研究で、超伝導体ではないと結論づけられました。抵抗の急変は不純物である硫化銅の相転移で説明されています。
- 室温で働く超伝導体ができたら何が変わりますか?
- 送電ロスがなくなり、MRI・リニア・核融合装置の冷却コストが大幅に下がって、エネルギーや交通が大きく変わる可能性があります。ただ室温・常圧の超伝導体はまだ確認されていません。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
- Onnes, H. K. (1911). The resistance of pure mercury at helium temperatures. Communications from the Physical Laboratory of the University of Leiden, 120b.
- Bardeen, J., Cooper, L. N., & Schrieffer, J. R. (1957). Theory of superconductivity. Physical Review, 108(5), 1175–1204.
- Bednorz, J. G., & Müller, K. A. (1986). Possible high Tc superconductivity in the Ba–La–Cu–O system. Zeitschrift für Physik B, 64(2), 189–193.
