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サールウォールの法則

📈 経済学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
サールウォールの法則とは、一国は長期的に経常収支の赤字を際限なく拡大することはできないため、その国の長期的な経済成長率は、輸出の伸び率を輸入需要の所得弾力性で割った値によって制約されるという命題です。英国の経済学者アンソニー・サールウォールが1979年に提唱し、「国際収支制約型成長モデル」の中核とされています。
目次
  1. 1. 起源と基本的な論理
  2. 2. 理論の拡張と含意
  3. 3. 実証研究と批判
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

起源と基本的な論理

ロイ・ハロッド(1933年)は、一国の産出が輸出と輸入性向によって決まるという「貿易乗数」を示しました。カルドア(1970年)は、地域や国の成長は供給よりも外部の需要、とりわけ輸出需要によって牽引されると主張しました。アンソニー・サールウォール(1979年)はこれらの考えを発展させ、実質為替レートが長期的に大きく変わらないとすれば、経常収支の均衡と両立する成長率は輸出の伸び率(x)を輸入の所得弾力性(π)で割った値、すなわち y = x / π になることを示しました。これより速く成長すれば輸入が輸出を上回るペースで増え、やがて国際収支の危機によって成長が止まらざるをえない、という論理です。

理論の拡張と含意

ハウタッカーとマギー(1969年)は、日本の輸出の所得弾力性は高く、英国の輸入の所得弾力性は高いという推計値を示しましたが、サールウォールの法則はこうした違いが国ごとの成長率の差を説明すると考えます。これは、一次産品の輸出国が構造的に不利な立場に置かれるとするプレビッシュ=シンガー仮説のようなラテンアメリカ構造学派の議論と似ています。サールウォールとフセイン(1982年)は資本流入を考慮してモデルを拡張し、モレノ=ブリッド(1998年)は持続可能な対外債務比率の条件を加えました。アラウジョとリマ(2007年)は、複数の産業部門の構造変化を反映した多部門版を提示しました。この視点からは、価格競争力よりも製品の品質や産業構造といった非価格競争力が長期的な成長にとって重要だという政策的な含意が導かれます。

実証研究と批判

マッコンビーとサールウォール(1994年)は、多くの国のデータで実際の成長率が法則の予測に近いという結果をまとめ、マッコンビー(1997年)は実証の方法論を整理しました。サールウォール(2011年)は30年あまりの研究を概観しています。一方、クルーグマン(1989年)は因果関係が逆である可能性を主張しました。供給側の要因で速く成長する国がより多様な製品をつくるため、輸出の所得弾力性が高く見えるというのです。クラビホとロス(2015年)は、この法則が測定上の同語反復に近いという批判とそれへの反論を検討しました。この論争は、マーシャル=ラーナー条件のように価格弾力性を重視する理論と、所得弾力性を重視する理論との違いを浮き彫りにしています。

よくある質問

サールウォールの法則を簡単に説明すると?
一国が長く速く成長するには、増える輸入をまかなえるだけ輸出も伸びなければならないので、輸出の伸びと輸入が所得にどれだけ敏感かが長期成長率の上限を決める、という法則です。
サールウォールの法則への主な批判は何ですか?
クルーグマンは、速い成長が輸出の弾力性を高めるのであってその逆ではないとして因果関係を問題にし、法則は測定上の同語反復に近いと批判する人もいます。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Thirlwall, A. P. (1979). The balance of payments constraint as an explanation of international growth rate differences. Banca Nazionale del Lavoro Quarterly Review, 32(128), 45–53.
  2. Harrod, R. F. (1933). International Economics. Cambridge: Cambridge University Press.
  3. Kaldor, N. (1970). The case for regional policies. Scottish Journal of Political Economy, 17(3), 337–348.
  4. Prebisch, R. (1950). The Economic Development of Latin America and Its Principal Problems. New York: United Nations.
  5. Houthakker, H. S., & Magee, S. P. (1969). Income and price elasticities in world trade. Review of Economics and Statistics, 51(2), 111–125.
  6. Thirlwall, A. P., & Hussain, M. N. (1982). The balance of payments constraint, capital flows and growth rate differences between developing countries. Oxford Economic Papers, 34(3), 498–510.
  7. Krugman, P. (1989). Differences in income elasticities and trends in real exchange rates. European Economic Review, 33(5), 1031–1046.
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  9. McCombie, J. S. L. (1997). On the empirics of balance-of-payments-constrained growth. Journal of Post Keynesian Economics, 19(3), 345–375.
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  11. Araujo, R. A., & Lima, G. T. (2007). A structural economic dynamics approach to balance-of-payments-constrained growth. Cambridge Journal of Economics, 31(5), 755–774.
  12. Thirlwall, A. P. (2011). Balance of payments constrained growth models: History and overview. PSL Quarterly Review, 64(259), 307–351.
  13. Clavijo, P. H., & Ros, J. (2015). La ley de Thirlwall: una lectura crítica. Investigación Económica, 74(292), 11–40.

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この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。