起源と基本構造
セントルシア出身の経済学者アーサー・ルイス(1954年)は、古典派経済学者と同じく、労働が事実上無制限に供給される経済を想定しました。農村の伝統部門には、一部の人が抜けても生産がほとんど減らないほど労働が余っており、近代部門は生存水準をわずかに上回る賃金を払うだけで必要な労働をいくらでも得られます。そのため近代部門の資本家は利潤を再投資して雇用を増やし、賃金が上がらないので利潤の分け前と貯蓄率が高まり、資本蓄積が加速します。ルイスはこの過程を経済発展の核心とみなし、貯蓄率の低い経済が高い貯蓄率の経済へと変わる理由を説明しようとしました。これはハロッド=ドーマー・モデルが重視した貯蓄と投資の問題ともつながっています。
ルイスの転換点と理論の拡張
余剰労働がすべて吸収されると、近代部門はより高い賃金を払わなければ労働を得られなくなります。この時点を「ルイスの転換点」と呼びます。ラニスとフェイ(1961年、1964年)は、農業生産性の向上が工業化を支えなければならないという点を加えてモデルを精緻化し、ジョルゲンソン(1961年)は余剰労働を仮定しない新古典派型の二重経済モデルを示しました。シュルツ(1964年)は、伝統的な農民も与えられた条件のもとで効率的に行動しているとして、限界生産がゼロの余剰労働という仮定を批判しました。トダロ(1969年)とハリスとトダロ(1970年)は、都市に失業があるにもかかわらず農村の人々が都市へ移動する理由を期待所得の格差で説明し、人口移動の理論を発展させました。
東アジアの事例と評価
南亮進(1968年)は日本経済が1960年前後にルイスの転換点を通過したと分析し、蔡昉(2010年)は中国で人口構造の変化とともに農民工の賃金が急速に上昇し、転換点をめぐる論争が起きたことをまとめました。ルイス(1979年)は自らのモデルを振り返り、二重構造は発展の過程でさまざまな形で持続すると述べています。ゴリン(2014年)は60年を振り返り、部門間の生産性格差と労働の再配置が成長にとって重要だというルイスの洞察は、今日の構造変化の研究でもなお中心にあると評価しました。このモデルは、成長の過程で不平等がいったん拡大してから縮小するというクズネッツ曲線の説明ともつながっています。
よくある質問
- ルイス・モデルを簡単に説明すると?
- 農村に人手が余っている国では、工場が低い賃金で人を雇い続けて利潤を再投資でき、労働が都市の産業へ移ることで経済が成長するというモデルです。
- ルイスの転換点とは何ですか?
- 農村の余剰労働がすべて工業部門に吸収され、それ以降は賃金を上げなければ労働者を確保できなくなる時点のことです。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
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