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リプチンスキーの定理

📈 経済学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
リプチンスキーの定理は、2財・2生産要素からなる経済で財の相対価格が一定に保たれるとき、ある生産要素(たとえば資本)の賦存量が増えると、その要素を集約的に用いる財の生産は要素の増加率以上に増え、もう一方の財の生産は絶対的に減少するという国際貿易理論の定理です。タデウシュ・リプチンスキーが1955年に示しました。
目次
  1. 1. ヘクシャー=オリーン体系のなかでの位置
  2. 2. 定理の内容と拡大効果
  3. 3. 応用と実証
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

ヘクシャー=オリーン体系のなかでの位置

ヘクシャー(1919年)とオリーン(1933年)のヘクシャー=オリーン理論は、各国は豊富に持つ生産要素を集約的に使う財を輸出すると説明します。この2財・2要素モデルからは四つの中心的な定理が導かれます。ヘクシャー=オリーンの定理、要素価格均等化定理、ストルパー=サミュエルソンの定理(1941年)、そしてリプチンスキーの定理(1955年)です。ストルパー=サミュエルソンの定理が財の価格の変化が要素価格に与える影響を扱うのに対し、リプチンスキーの定理は要素賦存量の変化が産出に与える影響を扱います。

定理の内容と拡大効果

繊維は労働集約的、機械は資本集約的な経済を考えてみましょう。財の価格が世界市場で与えられて一定なら、要素価格と各産業の要素投入比率も一定に保たれます。ここで資本が10%増えると、増えた資本をすべて雇用するには機械産業が拡大しなければならず、機械産業も労働をある程度必要とするため、繊維産業から労働を引き抜くことになります。その結果、機械の生産は10%を超えて増え、繊維の生産は絶対的に減少します。ロナルド・ジョーンズ(1965年)はこれを「拡大効果」として定式化し、リプチンスキーの定理とストルパー=サミュエルソンの定理が数学的に双対の関係にあることを示しました。

応用と実証

この定理はさまざまな現実の現象を分析する道具となりました。コーデンとニアリー(1982年)のオランダ病モデルでは、天然資源ブームが資源部門へ生産要素を引き寄せて製造業が縮小する「資源移動効果」が、リプチンスキーの論理で説明されます。リーマー(1984年)とハリガン(1995年、1997年)はOECD諸国のデータで、要素賦存量が産業別の生産構造を説明するかを実証的に検討し、技術の違いもあわせて考慮すればおおむね支持されるという結果を得ました。移民研究では、技能別の労働供給が増えたときに賃金よりも産業構成が調整されるかが検討され、ハンソンとスローター(2002年)、ガンダル、ハンソン、スローター(2004年)は米国の州とイスラエルのデータで、産業構成と技術変化が労働供給ショックを吸収する様子を報告し、ルイス(2011年)は技術選択の調整を強調しました。フィーンストラ(2016年)はこの定理を現代の貿易理論の標準的な内容として整理しています。

よくある質問

リプチンスキーの定理を簡単に言うと?
価格が変わらないまま、ある生産要素が増えると、それを多く使う産業はそれ以上に大きくなり、もう一方の産業はかえって縮小するという定理です。
ストルパー=サミュエルソンの定理とはどんな関係ですか?
ストルパー=サミュエルソンの定理は財の価格が要素価格に、リプチンスキーの定理は要素賦存量が産出に与える影響を扱い、ジョーンズ(1965年)は両者が数学的に双対であることを示しました。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Rybczynski, T. M. (1955). Factor endowment and relative commodity prices. Economica, 22(88), 336–341.
  2. Heckscher, E. F. (1919). The effect of foreign trade on the distribution of income. Ekonomisk Tidskrift, 21, 497–512.
  3. Ohlin, B. (1933). Interregional and International Trade. Cambridge, MA: Harvard University Press.
  4. Stolper, W. F., & Samuelson, P. A. (1941). Protection and real wages. Review of Economic Studies, 9(1), 58–73.
  5. Jones, R. W. (1965). The structure of simple general equilibrium models. Journal of Political Economy, 73(6), 557–572.
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  7. Leamer, E. E. (1984). Sources of International Comparative Advantage: Theory and Evidence. Cambridge, MA: MIT Press.
  8. Harrigan, J. (1995). Factor endowments and the international location of production: Econometric evidence for the OECD, 1970–1985. Journal of International Economics, 39(1–2), 123–141.
  9. Harrigan, J. (1997). Technology, factor supplies, and international specialization: Estimating the neoclassical model. American Economic Review, 87(4), 475–494.
  10. Hanson, G. H., & Slaughter, M. J. (2002). Labor-market adjustment in open economies: Evidence from US states. Journal of International Economics, 57(1), 3–29.
  11. Lewis, E. (2011). Immigration, skill mix, and capital skill complementarity. Quarterly Journal of Economics, 126(2), 1029–1069.
  12. Feenstra, R. C. (2016). Advanced International Trade: Theory and Evidence (2nd ed.). Princeton: Princeton University Press.
  13. Gandal, N., Hanson, G. H., & Slaughter, M. J. (2004). Technology, trade, and adjustment to immigration in Israel. European Economic Review, 48(2), 403–428.

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この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。