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ストルパー=サミュエルソン定理

📈 経済学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
ストルパー=サミュエルソン定理は、ある財の相対価格が上昇すると、その財の生産に集約的に使われる生産要素の実質報酬はどの財で測っても上昇し、他の要素の実質報酬は低下するという国際貿易理論の定理です。貿易が勝者と敗者を生む理由を説明します。
目次
  1. 1. 定理の内容
  2. 2. 貿易の政治経済学
  3. 3. 実証論争
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

定理の内容

1941年、ストルパーとサミュエルソンは論文「保護と実質賃金」で、関税が労働者の実質賃金を引き上げうるかを検討しました。2財・2要素(労働と資本)、完全競争、規模に関して収穫一定、両財の生産というヘクシャー=オリーン・モデルの仮定の下では、労働集約財の相対価格が上がると賃金はその価格以上の比率で上がり、資本のレンタルは絶対的に下がります。労働者はどの財で測っても豊かになり、資本家は貧しくなります。ロナルド・ジョーンズ(1965年)はこれを「拡大効果」として定式化しました。労働が希少な国で労働集約財に関税を課せば労働の実質賃金が上がるという結論は、「自由貿易は誰にとっても有益」という通念に重要な留保をつけました。

貿易の政治経済学

ヘクシャー=オリーン定理と組み合わせると、貿易の開放はその国に豊富な要素の所有者に有利で、希少な要素の所有者に不利になります。熟練労働と資本が豊富な先進国では、開放が非熟練労働者の実質賃金を下げうると予測されます。ロゴウスキー(1989年)はこれを政治に応用し、貿易拡大期には豊富な要素の集団が自由貿易を、希少な要素の集団が保護を支持する階級連合が形成されると論じました。ただし短期的に要素が産業間を移動できなければ、特殊要素モデルのように産業別の利害が重要になります。ジョーンズとシャインクマン(1977年)は、財と要素の数が増えると定理の明快な結論が弱まることも示しました。

実証論争

1980〜90年代に米国で熟練・非熟練の賃金格差が拡大すると、原因が貿易か技術変化かをめぐる論争が起きました。ローレンスとスローター(1993年)は、この経路が働くには非熟練集約財の相対価格が下がる必要があるがその証拠は弱いとして技術を重視しました。一方、ウッド(1994年)は南北貿易の効果が大きいと主張しました。クルーグマン(2008年)は中国などとの貿易拡大で貿易の役割を上方修正し、オーター、ドーン、ハンソン(2013年)の「チャイナショック」研究は輸入競争にさらされた地域で雇用と賃金が大きく打撃を受けたことを示しました。途上国では自由化後に熟練プレミアムがむしろ拡大した例が多く、単純な予測と合わないとの指摘もあります(ゴールドバーグとパブクニク、2007年)。それでもこの定理は、貿易の分配効果と調整支援政策を論じる出発点です。

よくある質問

ストルパー=サミュエルソン定理を簡単に言うと?
ある商品の値段が上がると、それを作るのに多く使われる生産要素(例えば労働)を持つ人は実質的に豊かになり、他の要素を持つ人は貧しくなるという定理です。
なぜ貿易は勝者と敗者を生むのですか?
貿易は財の相対価格を変え、この定理により豊富な要素の所有者は得をし、希少な要素の所有者は損をするからです。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Stolper, W. F., & Samuelson, P. A. (1941). Protection and real wages. Review of Economic Studies, 9(1), 58–73.
  2. Samuelson, P. A. (1948). International trade and the equalisation of factor prices. Economic Journal, 58(230), 163–184.
  3. Jones, R. W. (1965). The structure of simple general equilibrium models. Journal of Political Economy, 73(6), 557–572.
  4. Jones, R. W., & Scheinkman, J. A. (1977). The relevance of the two-sector production model in trade theory. Journal of Political Economy, 85(5), 909–935.
  5. Deardorff, A. V., & Stern, R. M. (Eds.). (1994). The Stolper-Samuelson Theorem: A Golden Jubilee. Ann Arbor: University of Michigan Press.
  6. Rogowski, R. (1989). Commerce and Coalitions. Princeton: Princeton University Press.
  7. Wood, A. (1994). North-South Trade, Employment and Inequality. Oxford: Clarendon Press.
  8. Lawrence, R. Z., & Slaughter, M. J. (1993). International trade and American wages in the 1980s. Brookings Papers on Economic Activity: Microeconomics, 1993(2), 161–226.
  9. Krugman, P. (2008). Trade and wages, reconsidered. Brookings Papers on Economic Activity, 2008(1), 103–154.
  10. Autor, D. H., Dorn, D., & Hanson, G. H. (2013). The China syndrome. American Economic Review, 103(6), 2121–2168.
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  12. Feenstra, R. C. (2016). Advanced International Trade: Theory and Evidence (2nd ed.). Princeton: Princeton University Press.
  13. Krugman, P. R., Obstfeld, M., & Melitz, M. J. (2018). International Economics: Theory and Policy (11th ed.). Boston: Pearson.

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この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。