トクヴィルの観察
トクヴィルは『旧体制と大革命』(1856年)で、革命が起きたのは状況が最も悪かったときではなく、むしろルイ16世のもとで繁栄が増し、改革が始まった後だったと書きました。彼は、悪い政府にとって最も危険な瞬間はたいてい改革を始めるときであり、辛抱強く耐えていた苦しみも、それを取り除けるという考えが浮かんだ瞬間に耐えがたいものになると考えました。また、革命の中心地となったイル=ド=フランスのように、封建的な負担が最も軽くなった地域で反発が最も激しかったとも指摘しています。『アメリカのデモクラシー』では、平等が広がるほど、残った小さな不平等がより目につき、耐えがたくなるとも書きました。これは、条件が良くなるほど期待がそれ以上に速く高まり、不満が大きくなりうるという洞察です。
相対的剥奪理論への発展
ストウファーら(1949年)は『アメリカ兵』の研究で、昇進の速い航空隊の兵士のほうが、昇進の遅い憲兵よりも昇進制度に不満が多いことを見いだし、これを相対的剥奪によって説明しました。ランシマン(1966年)は、人は絶対的な境遇ではなく比較対象との差によって剥奪を感じるという相対的剥奪の概念を体系化しました。デーヴィス(1962年)は、長い経済的・社会的な発展の後に急激な反転が訪れると、期待と現実の差が開いて革命が起こりやすくなるというJカーブ理論を示し、トクヴィルとマルクスの見方を結びつけました。ガー(1970年)は『人はなぜ反乱を起こすのか』で、価値期待と価値能力の差を相対的剥奪と定義し、これを政治的暴力の中心的な原因とみなしました。ハンチントン(1968年)は、急速な近代化が政治参加の要求を制度化の水準よりも速く増やし、不安定を生むと主張しました。ハーシュマンとロスチャイルド(1973年)は、ほかの人の所得が上がると、はじめは自分もすぐに良くなるだろうという希望を与えるが、期待が実現しなければ怒りに変わるという「トンネル効果」によって、不平等への寛容さが時間とともに変わる過程を説明しました。
批判と評価
ティリー(1978年)は、不満はどこにでもあるのでそれだけでは集合行動を説明できず、組織、資源、機会構造こそが決定的だという資源動員論の立場から、相対的剥奪理論を批判しました。スコッチポル(1979年)は、フランス、ロシア、中国の革命を比較し、革命の原因を大衆の心理よりも、国家の危機、国際的な圧力、農民共同体の構造に求めました。ブラッシュ(1996年)は、相対的剥奪と集合的暴力についての研究が、1970年代以降、実証的な支持の不足から衰退していった過程を分析しています。しかし、スミスら(2012年)は210の研究をメタ分析し、個人ではなく集団レベルの相対的剥奪は集合行動と一貫して関連していると報告し、この伝統を部分的に復活させました。トクヴィルのパラドックスは、所得の増加が満足を保証しないというイースタリンのパラドックスとともに、改革と成長の時期にこそ政治的なリスクが高まりうるという警告として、今日でもよく引用されています。
よくある質問
- トクヴィルのパラドックスを簡単に言うと?
- 暮らしが良くなれば人々は満足しそうなものですが、期待のほうがそれ以上に速く高まり、かえって不満が増える現象です。トクヴィルは、フランス革命が最も苦しい時期ではなく、状況が良くなりつつあった時期に起きたと指摘しました。
- 暮らしが良くなると、必ず革命が起こるという意味ですか?
- いいえ。不満が大きくなりうるということであって、必ず革命につながるという意味ではありません。その後の研究は、革命には組織や資源、国家の危機といった構造的な条件も必要だと強調しています。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
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- Stouffer, S. A., Suchman, E. A., DeVinney, L. C., Star, S. A., & Williams, R. M. (1949). The American Soldier: Adjustment During Army Life (Vol. 1). Princeton: Princeton University Press.
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