歴史
ロナルド・フィッシャーはp値で帰無仮説に反する証拠の強さだけを論じましたが、イェジ・ネイマンとエゴン・ピアソン(カール・ピアソンの息子)は1933年の論文で検定を「決定規則」ととらえ、2種類の誤った決定を定義しました。帰無仮説が真なのに棄却するのが第一種の過誤、偽なのに棄却しないのが第二種の過誤です。1960〜80年代にはジェイコブ・コーエンが心理学研究の多くは検出力が低すぎて第二種の過誤を犯しがちだと警告し、2005年のジョン・イオアニディスの論文は第一種の過誤と出版バイアスのために発表研究の多くが誤りでありうると指摘し、再現性危機を招きました。
概念とトレードオフ
第一種の過誤の確率は有意水準αで、通常5%とします。第二種の過誤の確率はβで、1−βを検出力といい、通常80%以上を目標にします。裁判にたとえると、第一種の過誤は無実の人を有罪に、第二種の過誤は犯人を無罪にすることです。PCR検査で非感染者が陽性と出れば第一種、感染者が陰性と出れば第二種の過誤です。標本サイズが同じならαを下げるほどβが大きくなるため、両方を減らすには標本サイズを増やす必要があります。
実践上の注意
検定を20回行えば、効果がまったくなくても1回くらいは偶然有意になります。そのため複数の比較ではボンフェローニ補正などでαを調整します。結果が出るまで分析方法を変える「pハッキング」は第一種の過誤を大きく膨らませます。A/Bテストで毎日結果をのぞき、有意になった瞬間に止めるのも同じ問題です。事前確率を考えるベイズの定理の観点では、ありそうにない仮説ほど「有意」な結果も偽陽性である可能性が高くなります。
よくある質問
- どちらの過誤がより悪い?
- 状況次第です。がん検診のように見逃しが危険なら第二種、新薬承認のように誤承認が危険なら第一種をより警戒します。
- 検出力を上げるには?
- 標本サイズを増やす、測定誤差を減らす、効果が大きい条件で実験するなどの方法があります。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
- Neyman, J., & Pearson, E. S. (1933). On the problem of the most efficient tests of statistical hypotheses. Phil. Trans. R. Soc. A, 231, 289–337.
- Cohen, J. (1988). Statistical Power Analysis for the Behavioral Sciences (2nd ed.). Erlbaum.
- Ioannidis, J. P. A. (2005). Why most published research findings are false. PLoS Medicine, 2(8), e124.
