起源と意味
ドロ(1893年)は短い論文「進化の法則」で、生物は以前の状態に戻ることはできず、すでに実現した状態を正確に繰り返すこともないと主張しました。グールド(1970年)は、ドロの本来の意図は進化が決して方向を変えられないということではなく、複雑な状態が偶然まったく同じように再現される確率はきわめて低いという統計的な主張だったと解釈しています。マラー(1939年)は遺伝学の立場から、多くの遺伝子が関わる形質は元に戻りにくいと考え、シンプソン(1953年)もこの原理を大進化の一般的な特徴として受け入れました。
遺伝的な根拠と反例
マーシャル、ラフ、ラフ(1994年)は、使われなくなった遺伝子が突然変異で壊れていく速さを計算し、約1,000万年たつと失われた形質を復活させる遺伝情報はほとんど残らないと推定しました。しかしその後、反例が次々と報告されました。ホワイティング、ブラドラー、マクスウェル(2003年)は、ナナフシの翅が何度も失われては再び進化したと主張し、コリンとチプリアーニ(2003年)は、巻いていない殻をもつ巻貝の系統で巻いた殻が再び現れたと報告しました。ウィーンズ(2011年)は、カエルの下顎の歯が2億年以上失われた後に一つの系統で再び生じたと結論づけ、リンチとワグナー(2010年)は、胎生のボアの系統で卵生が再び進化したと主張しています。
方法論をめぐる論争と分子レベルの不可逆性
ゴールドバーグとイギッチ(2008年)は、こうした反例は系統樹の上で形質の変化を推定する統計手法によって変わりうるとして、不可逆性の仮説を検定する方法は慎重に扱う必要があると指摘しました。コリンとミリエッタ(2008年)は反例の研究を検討し、失われた形質の発生経路がほかの機能のために保存されていれば再進化は可能だとまとめています。テオトニオとローズ(2001年)は、実験室の集団で形質が祖先の状態に戻る「逆進化」を論じました。ブリッジハム、オートランド、ソーントン(2009年)は、ホルモン受容体タンパク質の進化において、後に生じた突然変異が以前の状態に戻る道をふさぐ「エピスタシスのラチェット」を示し、分子レベルで不可逆性が生じるしくみを提示しました。こうした議論は経路依存性の概念ともつながっています。
よくある質問
- ドロの法則を簡単に説明すると?
- 進化の過程で翅や歯のような複雑な構造を一度失うと、まったく同じ姿で再び手に入れることはほとんどない、という原理です。
- ドロの法則が破られたことはありますか?
- ナナフシの翅、カエルの歯、卵を産むボアなどの反例が報告されていますが、分析方法によって結論が変わりうるため、議論が続いています。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
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